ニッケイ新聞 2012年4月5日付け
【既報関連】3日に政府が発表した工業刺激策に対し、産業界からは疑問を呈す声が聞かれ、不服とする工業連盟が次々と抗議活動も行っている。3日付伯字紙やG1サイトが報じている。
政府が「マイオール・ブラジル」の第2弾として発表した新工業刺激策は、経済開発銀行(BNDES)に450億レアルをつぎ込み、投資持続プログラム(PSI)を2013年まで延長することなども盛り込んだ、総額604億レアルに上る政策だ。
2009年導入のPSIは機械やトラック、バスの購入や技術開発のための資金を補助付の低金利で貸し付けるもので、ルシアーノ・コウチーニョBNDES総裁によると、貸付金利をさらに下げ、返済期間も延長するという。これは、国内総生産(GDP)中19・9%と、世界でも最も低い割合といわれる工業投資を12年までに22%、14年までに23%にあげるための方策の一つだ。
これら一連の刺激策に対し、「輸入品流入などで第1四半期も低迷していた経済活動が回復する可能性がある」と語る全国工業連合(CNI)のロブソン・ブラガ・デ・アンドラーデ会長のような意見もあるが、全体としては疑問を呈す反応が目立っている。
サンパウロ州工業連盟(Fiesp)のパウロ・スカフィ会長は「このやり方では欧米に比べて格段に高いコスト高の問題がまだ解消されていない」とし、「大統領府にもう一度話しにいかないといけない」と語った。また、機械装置工業会(Abimaq)のルイス・アウベルト会長は「ブラジル産業界で深刻な問題となっている金利と為替の問題の解決には不十分」だとし、「1レアル=2・20〜30米ドルが理想だ」と語っている。
工業界の業績不振に対する政府の対応の遅れに対しては各種団体が抗議活動も行っている。7大労組の一つであるフォルサ・シンジカルは刺激策発表前の3日朝、大統領府の前で、中国の民族衣装に身を包み、中国製のサッカー・シューズを首にぶらさげるなどして、今のままでは「中国からの輸入品の勢いに対抗できない」と訴えた。
また4日朝は、サンパウロ市南部イビラプエラにある州議会前で、中央労組(CUT)とフォルサ・シンジカル所属の労働者や、Fiespに加盟の企業家たちが「国内生産と雇用を守るための警告の叫び」と銘打った抗議活動を展開。この集団がブリガデイロ・ルイス・アントニオ大通りを行進したために、サンパウロ市の交通が乱れ、午前9時40分頃には90キロメートルの渋滞を記録した。