ニッケイ新聞 2012年4月5日付け
【岸和田】=だからアンゴラとブラジルの関係ってのは経済的にもそうだけど、強かったのは特に17〜8世紀。
【深沢】=日本でいえば江戸時代ですか、関係は古いですね。アンゴラとブラジルってのはそんな頃から緊密な関係があったわけなんですか。
【岸和田】=ありました。やっぱりポルトガル人が植民地化したからそういうことになった。
【深沢】=ほお〜。でも、今例えばグローボの衛星放送を、アフリカのポルトガル語圏の国々でも見てる?
【岸和田】=見てます。モザンビークもアンゴラも。
【深沢】=視聴率的にはどうなんですか。
【中山】=そもそもモザンビークの場合、まずテレビを見られる人が少ないんですよ。
【深沢】=まだ、そういう状態な訳ですか。
【岸和田】=ポルトガル語圏とはいえ、ポルトガル語を理解する人口が全体の半分もいないから。
【中山】=そうです、モザンビーク全体で2千万強人口がいるんですけどポルトガル語を解する人達は半分程度です。
【深沢】=あっ、そんなもんなんですか。
【中山】=はい。例えば私が首都から1時間くらいの所にセレモニーに行ったときに、ポルトガル語でスピーチしても、そこに現地語の通訳が入るんですよ。
【深沢】=ほお〜、そうなんですか。
【中山】=で、現地語ってまあ色んな言語がありますけど、30ぐらいあると言われてますが、モザンビークのほとんどの都市部以外では、現地語をメインで話しているんですよね。あとポルトガル語は分かるけれども、基本的には現地語を話すというケースがまだあるんですよね。
ただ都市部においては結構テレビを見てる人がいて、少し裕福な若者は結構ブラジルのノベーラが好きでよく見たり。
【深沢】=じゃあ割とお金もちっていうか、中産階級以上の層に、ブラジルの文化に対する憧れみたいなものは植え付けられたりするんですか。
■ブラジル製品に熱い眼差し
【中山】=特にファッションなんです。首都マプトとかで人気のあるファッション店っていうのは、大体ブラジルのスタイルを勉強して、そういうものを売ったりしている。あと服とか結構、都市部ではブラジルから輸入してたりしてますね。例えば、私の妻がモザンビークでウエディングドレスを買ったんですけど、それブラジル製なんです。ウエディングドレス屋にいくとブラジル製のがズラリとならんでいる。
【深沢】=ほお〜、いい服とか、いい商品ってのはブラジル製が並んでるっていう感じですか。
【中山】=ファッションのところだと、ブラジルから、まあ実際に製造しているのはブラジルかどうかわかんないですけど、ブラジルから来ているって言う風に説明がありますね。
【岸和田】=私マプトに4日間しかいなかったからあまりいえないんですけど、街の中歩いてても流れてくる音楽って全部ブラジル音楽ですもん。
【深沢】=ええ! そうなんですか。
【岸和田】=ブラジル音楽一色ですね。
【深沢】=ポルトガルの、若者向けの音楽ってのもあるんですか。こっちで言ったらパゴッジだとか、ポルトガルのロックみたいなものはあるわけですよね。そういうのってのは、アフリカの国に行かないわけですか。むしろブラジルからの音楽とか、文化の影響の方が強い。
【中山】=強いと思いますね。
【深沢】=どうしてなんでしょう。
【中山】=あまりモザンビークではポルトガルの音楽は聞かなかったですね。あと、若者たちの間でもそんなに流行ってなかったと思います。
【岸和田】=マーケットが小さいからでしょう。ブラジルだったらブラジル市場だけで成功できるわけですが、モザンビークはそうはいかない。
だからモザンビーク出身の歌手は、例えばリスボンで成功すれば、そういうの何人か出るけど、それがポルトガルでアルバムを出して、それが輸入されればモザンビークでも。モザンビークプロパーでは多分レーベルはないと思うんですよ。アルバムを作れるような。
【深沢】=元々ポルトガルから来たポルトガル語によって熟成されたブラジル独自の文化ってのは、逆に衛星放送(グローボ)を通して、アフリカやポルトガルにかなり影響が広がり始めているわけですね。
【岸和田】=映画より、だんとつにグローボのノベーラですね。
【小林】=これかなり前からですよね。
【岸和田】=20年、30年前。
【小林】=70年代からやってる。『ガブリエラ』とかね。
【深沢】=70年代から! あ、そうですか。
【岸和田】=1980年代に流行った『ホッキ・サンテイロ』なんてね、例えばアンゴラで流行ると、ノベーラで出た言葉が地名になっちゃったりする。
【深沢】=地名になるんですか。
【岸和田】=例えばルアンダでは市場の名前にホッキ・サンテイロとつけちゃった。そういうことをしてるわけです。
【深沢】=ほお〜。
【岸和田】=まあアンゴラの場合はね。やっぱり皆ノベーラ見るから。(つづく)
写真=ブラジルの流行を取り入れた洋服が並ぶブティック(マプトで、写真提供=中山雄亮さん)