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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年4月5日付け

 コーヒーの国際価格が高騰しているというニュースを聞いて久しい。その理由は、かつて輸出用だった豆のブラジル国内での消費が上がったせいだとか。確かにエスプレッソを提供する店が増えた。数年前では1レアルで飲めたものだが、現在は3倍近い▼世界で一番高いコーヒーはインドネシア産の「コピ・ルアク」(Kopi Luwak)と言われ、日本ではキロ5万円ほどで販売される。ジャコウネコが食べた豆を糞から取り出し焙煎したもので、消化酵素や腸内発酵が独自の風味をもたらすという。その値段は味ではなく、あくまで稀少価値であるようだ▼そのブラジル版ともいえるものが「ジャクー・バード・コーヒー」(Cafe Jacu Bird)だ。良質の豆を食い荒らすジャクー(キジの一種)に困った有機栽培者が「コピ・ルアク」にヒントを得て始めたという。ジャコウネコより豆が体内に留まる時間が短いことから、鑑定士によれば「ルアクよりも苦味が薄く甘みもある」とか▼先日立ち寄ったサントスのコーヒー博物館内の店で見つけ小躍りした。値段もさすがのキロ334レ、一杯でも楽しめるが18レとなかなか。精神統一、味蕾を全開にして飲んでみた。酸味も苦味もカフェインも強め、味はかなり個性的、とするに留めておこう▼再度メニューに目をやると、値段がシールに書かれている。ガルソンの目を盗み剥がしてみると以前の値段は12レ。なるほど1・5倍、これも同様値上がったわけだ。旧公式取引所だった館内には笠戸丸移民の写真がある。金のなる木の触れ込みで夢見た初期移民らは、農園でジャクーのさえずりを聞いたろうか。(剛)