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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年4月10日付け

 チベット・ビルマ語系民族が9世紀に南下し群雄割拠し争った国。その後、11世紀になるとビルマ民族による統一国家バガン王朝が成立したが、それからも政治的な対立が多く、結局はイギリスの植民地になった。この国の独立には日本も深く関与し、建国の父・アウン・サンとネ・ウインは、日本で訓練を受け英国と闘い、勝利を手にした歴史を忘れまい▼アウン・サンは、反対派に暗殺されるが、この人の娘が今、話題のスー・チーさんである。軍事政権から自宅軟禁を命じられ、政治活動も禁止されたが、それでも民主化を唱え軍政批判を繰り返し、ノーベル賞にも輝いた。このスー・チーさんが率いる国民民主運動(NLD)が先の連邦議会補選で旧軍事政権与党の連邦団結発展党(USDP)を破り、45議席のうち43議席を獲得するという圧勝に世界の国々が拍手喝采を送ったのは喜ばしい▼軍政非難から経済制裁を課していた日米やASEANも解除を求める声明を発表している。と、民主化へと大きく踏み出したのは、大いに結構なのだが、ミヤンマーの上院は224、下院は440議席と補選の勝利だけでは政権掌握には遠い。これからは2015年の次期総選挙で過半数を獲得できるかが「鍵」となる▼故・ネ・ウイン大統領の社会主義国家は、かなり注目されたけれども、結局は軍部が政権を掌握し、厳しい政治が展開され経済的にも極めて貧しい。こうした状況を脱し民主国家を築くのは難しいが、スー・チーさんの本格的な闘いは、いよいよ本番を迎え、国家再建へと進む。(遯)