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「ブラジルの教育は遅れている」=大統領が自己認識示す=ハーバードでの講演会で=米2大学と学術協定結ぶ

ニッケイ新聞 2012年4月12日付け

 8日から米国を訪問中だったジウマ大統領が10日、ハーバード大学での講演会で、ブラジルの教育が遅れているとの認識を示したと同日付Gⅰサイトが報じた。

 ジウマ大統領が10日に、マサチューセッツ工科大学(MIT)とハーバード大学を訪問した事は11日付伯字紙も報じているが、G1サイトによると、大統領は、ブラジルでの教育の遅れはかなり重症で、保育所から大学院までの全ての改革が必要との認識を示した。
 今回の米国公式訪問の焦点は教育と技術開発面での協力とされており、どのような形で提携が図られるか注目されていたが、ブラジルが優先したいのは、発明や開発につながる自然科学や技術といった実用型の部門という。
 MITでは、メルカダンテ教育相が「ブラジルにMITのキャンパスを作る約束をした」と発言し、MITから、自分達は国外に支部を作る意図はないと訂正されたが、サンパウロ州サンジョゼ・ドス・カンポスにある航空技術研究所(ITA)と学術協定を結び、6カ月以内に技術開発センター立ち上げの合意が成立した。
 また、ハーバード大学では、5年間の奨学生制度を設け、ブラジルの教育者や研究者が同校で1年間学べるようにするほか、ブラジルが選んだ博士課程の学生40人、大学院修了者40人と、医学部75人や工学部などの学部生の受け入れも行う。
 また、ブラジル側も、ハーバードの応用科学・技術部門で1年学ぶ短期留学生制度を、年25人程度の枠で準備する意向だ。
 大統領のハーバード訪問は、ルーラ政権で大統領府政策局長官を務め、哲学者のロベルト・マンガベイラ・ウンジェル教授の仲介で実現した。大統領は、ハーバードとの学術提携は、Cクラスを中心としたブラジルが力強く前進するための大前提と講演会で語った。
 ハーバード大学は、マイノリティ(少数派)の受け入れにも積極的で、実力、評判、いずれの評価でも、世界で1、2位を争う大学だ。
 ブラジルからは今年、同校への合格者が3人出ている。リオ州のジョアン・エンリッケ・ヴォジェルさん(18)は、物理や情報科学が好きだが、経済学にも興味があり、リオ連邦大学などを蹴ってハーバードに。また、公立校で才能を認められ、奨学金を受けて私立校卒業のサンパウロ州のタバタ・クラウジアさん(17)は、天文物理学と社会科学に興味あり。2人共、卒業後はブラジルに戻り、教育に携わりたいという。
 また、本紙でも紹介した事があるサンジョゼ・ドス・カンポスのグルターヴォ・ハダジ・ブラガさん(17)はMITにも合格し、どちらに行くか思案中。セアラ州のジョアン・ルカス・カメロ・サさん(17)もMITに合格している。
 ジウマ政権では昨年、10万人以上の国費留学生を派遣との計画が発表されたが、現時点で実現したのは3%。留学生が帰国しても受け皿が不充分との声もあり、総合的な政策が待たれている。