ニッケイ新聞 2012年4月12日付け
「名前はよく聞いていたけど、ここにもこんなに日系人がいるのね」—。参加者の一人はバスに乗り込みながら、感慨深げにそう漏らした。ブラジル日本都道府県人会連合会(園田昭憲会長)主催「移民のふるさと巡り」は37回目を迎え、先月31日〜4月3日に実施された。かつてコーヒー、棉栽培などで栄えた移住地をバス3台で巡り、サンパウロ州ボツカツ、バウルー、パラグアスー・パウリスタの3カ所の日本人会では温かなもてなしを受け、交流を深めた。
初日午前7時、早朝の冷涼な空気の中、リベルダーデ広場に総勢122人の参加者が続々と集まった。多くがサンパウロ州内から、遠方はブラジリア、ゴイアス、リオ、パラナ各州から、平均年齢70代半ばの〃ツワモノ〃が早々とバスに乗り込み、ほぼ定刻に出発した。
最初の目的地は、人口約13万人のボツカツ。サンパウロ市から西に235キロの同地を目指してバスはカステロ・ブランコ街道をひた走り、約4時間後、まずはボツカツ日本文化協会が運営する「ボツカツ日伯学生寮」に到着した。
同文協評議員会長の坂手実さん(二世、76)らの出迎えを受け、一行はバスを降りて足早に寮内のサロンを見学。
一行は「素晴らしい学生寮ね」などと口々に感想をのべ、「何人くらい学生がいるのですか」との質問も飛んだ。
坂手さんの説明によれば、同学生寮は89年に開設され、現在37人が入寮している。サンパウロ州立大学(UNESP)の農、医、獣医、生物学部を擁するボツカツ・キャンパスから車で10分ほどの距離に位置し、日系、非日系に関わらず学生を受け入れているという。
ふるさと巡り常連の小原あやさん(90、岩手)はボツカツ在住。今回地元からの合流となった。続々とバスに乗り込む一行を尻目に、階下にある図書館と日本語教室をわずかな時間を縫って記者を案内してくれた。こじんまりした図書室ながら、漫画などが美しく整頓されていた。
「皆さんに説明しようと思って待っていたんだけど、時間がないみたいね」と残念そうなあやさんは「今でも週に2回は来ています」と笑顔をみせた。(田中詩穂記者、つづく)。
写真=日伯学生寮を見学した参加者一行/現在も週に2回は図書館に足を運ぶという小原あやさん