ニッケイ新聞 2012年4月14日付け
「日系社会の皆様によろしくお伝えください」——。「第40回医療功労賞」(読売新聞社主催)の受賞式のため訪日したサンパウロ日伯援護協会の菊地義治会長が先月26日、天皇皇后両陛下と特別謁見した。2月に心臓パイパス手術を受けられたばかりにも関わらず、約1時間にわたりコロニアや現在のブラジル社会について尋ねられた。「あっという間に感じた」と話す菊地氏に対話の様子や、両陛下からのコロニアへのメッセージを聞いた。
都内のホテルで行われた式典後に、他の受賞者らと3月16日に皇居を訪問。「その際、陛下が直接お目にかかりたいと仰っているので後日連絡する、と侍従から言われた」
10日後の26日午後2時半、指定された東京丸の内駅で待っていた菊地夫妻を迎えに来た車は皇居へと向かった。案内された広間はガラス張りで、黒松や寒桜、梅など四季折々の植物が植えられた庭に面していた。
5分後、天皇皇后両陛下が部屋に入られ、目の前に座られた。菊地氏によれば、陛下は読売新聞に掲載された菊地氏の受賞に関する記事を事前に読まれており「ブラジルに行かれたときは苦労されたでしょうね」と切り出されたという。
歓談は天皇陛下が摘まれたという野菜も入った春の七草、吸い物など7種類の食事をしながら和やかに進んだ。弓場農場の小原明子、芸術家の大竹富江、宮坂国人各氏の名前を挙げられ、「コチア青年と花嫁移民の方々はお元気ですか」と尋ねられたという。
皇后陛下は二宮正人CIATE理事長の名前を挙げられ、「日本に来ているデカセギの子供達が日ポ両語を覚え、両国関係の親善に寄与する人材となって頂きたいです」と話されたという。
天皇陛下はこれまで3回ブラジルを訪問。2回目の78年に訪問された北パラナのローランジャ、マリンガ、クリチーバなどを「懐かしいですね」と話され、06年に亡くなった最後の笠戸丸移民中川トミさんについても触れたという。
菊地氏は老人ホームや病院の運営、自閉症児療育など援協の事業を紹介し「社会的に重要な位置を占めています」と説明。また、セラード開発の経験を活かしアフリカ大陸で実施する『プロサバンナ計画』などについても説明した。
最後に天皇陛下から「日系社会の皆さんに宜しくお伝えください」とのお言葉があり、両陛下に見送られながら夫妻は退室した。
菊地氏は「コロニアがブラジル社会と融合しながら、農、工、商業の各分野で貢献していることを喜んでおられるように見えた。二世から六世までいる日系人が立派にやっていることを十分認識されていると感じた。移住についてよくご存知で、大切に考えておられる」と印象を語りつつ「思いもよらないことで光栄。個人ではとても謁見はありえなかった。あくまで援護協会の代表として呼んで頂いたと思う」と話していた。