ニッケイ新聞 2012年4月21日付け
【既報関連】アルゼンチンのフリオ・デ・ヴィド企画・公共投資相が20日、ブラジリアで、エジソン・ロボン鉱山動力相とペトロブラスのマリア・ダス・グラッサス・フォステル総裁と会談し、同国におけるペトロブラスの活動を活性化するために投資を増額するように求めたと20日付G1サイトが報じた。
クリスチーナ・キルチネル大統領が16日に石油大手YPF社の国有化案を議会に提出する前、YPF社の監督者の一人に任命したデ・ヴィド企画相の来伯は20日付伯字紙でも報じ、ペトロブラスをどう扱うかが注目されていたが、亜国側はペトロブラスのシェアが15%まで高まる事も期待しているという。
クリスチーナ政権によるYPF国有化は世界的にも注目され、YPFの最大株主だったレプソル社が大打撃を被る事に業を煮やしたスペインは、外務相らをラ米各国に送るなどして国際世論を取り込もうと画策中。
その一方、亜国内でも石油採掘を行い、一時はシェアを12%まで上げたものの、現在は8%に落ちているペトロブラスの扱いが気になっていたのがブラジルだ。
ブラジル側は、YPFの国有化は亜国内の問題として、干渉を避ける姿勢に終始。メルコスル内の経済大国で外交や貿易でも密接な関係を保ってきた亜国が、ブラジル企業の国有化を言い出す事はないと踏んでいたのも確かだ。
だが、近年は、ネウケン県内の生産活動停止を命じられるなど、同国内の活動が狭められ、シェアも失っていただけに、今回のデ・ヴィド企画相の投資増額とYPFと共同での石油増産計画に加わるようにとの要請は、嬉しい誤算といえる。
2011年の亜国でのペトロブラス投資額は5億ドルで、今年も同額を予定していたが、同国内のシェアを15%まで伸ばすなら、予算以上の投資も必要となる。
亜国政府は、YPFの国有化を打ち出した後、天然ガス部門も国有化の対象とする事と、生産高を年内に25%増やす業務改善策を実施する事を発表しており、ペトロブラスの活動拡大要請も、エネルギー自給率拡大への一環と思われる。
ただ、亜国が石油増産計画を発表したおり、YPFの増産でラ・プラタ製油所の精製事業の稼働率が93%になれば、火力発電用燃料も増産でき、月2110万ドルの外貨節約などと強調した事で、政府の関心は外貨獲得が主で、エネルギー自給率回復策は練ってないとの声も出ている。
また、昨年の燃料輸入額が94億ドルに達した事の責任を被せられたレプソルとスペインは、19日の国際通貨基金の会合でも亜国政府を批判。裁定役の世界銀行総裁も不当との考えを表明し、米国もスペインに肩入れする意向だ。国民人気を楯に大鉈を振るうクリスチーナ政権のやり方に、国内外からの批判の声も聞こえてきている。