ベネズエラ=元判事がチャベス政権告発=副大統領らが判決を操作=軍部が麻薬取引と癒着も
ニッケイ新聞 2012年4月21日付け
チャベス政権に職責を剥奪されたベネズエラの元最高裁副長官が米国に、同政権による裁判の判決への干渉や麻薬組織と軍部の癒着など、腐敗の実情を訴えた。20日付伯字紙が報じている。
エラディオ・アポンテ・アポンテ元最高裁判事(63)は2週間前、逃亡先のコスタリカで米国の麻薬取締局(DEA)と接触し、チャベス政権の腐敗ぶりを訴えた。これまでで最も地位のあった人物によるチャベス政権への告発を米国が正当なものと判断した場合、米国政府はベネズエラ政府の高官たちの起訴も辞さないという。
アポンテ氏は19日、米国マイアミから放送のスペイン語テレビ局、ソイ局のインタビューに応じ、2004年にチャベス大統領が直接電話をかけ、同国政府に対する陰謀を企てたコロンビア人の囚人に対しベネズエラ政府に有利な判決を下すように指示したことや、麻薬所持で捕まった軍幹部への執り成しを軍が頼んだことを暴露した。
また、エリアス・ハウア副大統領らの政府高官が毎週判事や検事たちと会議を行っては、政府に関わる重要な裁判に関しての判断を一方的に決めており、「全てが操作され、判事たちには自分たちで判断する余地が全く残されていなかった」と告発。関係した政府高官ひとりひとりの具体名をあげて批判し、ベネズエラの裁判の裏に隠された内情を暴露した。
アポンテ氏は3月にベネズエラ議会により、麻薬密売人であるヴァリド・マクレッド容疑者に特別な身分証明書を発行するのを許可したとして判事の座を追われた。この件に関し、アポンテ氏はソイ局のインタビューに、容疑者の顔に見覚えはあったものの、その時点で麻薬取引に関わっている人物だと知らず、身分証明書発行許可の署名を行ったか否かも覚えてないと答えている。
これらの証言を受け、ベネズエラのニコラス・マドゥロ外相は「(アポンテ氏は)麻薬密売に加担した上、悪魔(DEA)に魂を売った」と批判した。ベネズエラ政府は「DEAは麻薬組織を摘発すると称して国内に入り、スパイ活動を行おうとする」として、係官の入国を拒否している。
20日付エスタード紙には、1999年8月にベネズエラの最高裁長官を退いたセシリア・ソーザ・ゴメス氏へのインタビューが掲載されているが、ソーサ氏は「アポンテ氏はわが国の司法界における重要人物」としてその証言の重さを強調した上、「ベネズエラの司法は憲法よりも大統領に忠実な仕組みになっている」と批判。さらに「大統領に何がしかの品位が残っているなら、あらゆる階層にはびこる悪を一層すべきだ」と語った。