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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年4月24日付け

 大伴家持は「万葉集」に「夏痩せに(略)むなぎ取り召せ」と詠んでいるが、これほどに日本人は昔から鰻がとても好きなのである。あの頃は筒切りに塩を振り焼いたものだが、今の蒲焼は江戸時代になってからの料理らしく、あれは—けっこう難しく、裂き3年、串打ち8年、焼き一生と鰻屋の亭主も職人も苦労を重ねながら「店の味」を誇ったそうだ▼この日本の鰻も、ここ3年ばかり養殖に使う稚魚(シラスウナギ)が不漁で昨年12月の解禁から現在までまったく捕れずに関係者も「助けてくれぇー」と悲鳴を上げている。こんな背景もあり、アフリカから30キロやフィリピンの50キロとシラスウナギを輸入したことがわかり話題になっているの記事がニッケイ新聞に掲載されていたが、もし、これが放流でもされると、ニッポンウナギの生息に影響すると専門家は警告する▼アフリカやフリッピンと欧米の鰻は日本とは品種が異なる。日本では2000年に約17万トンもの鰻を胃の腑に納めたが、中国からも蒲焼を大量に輸入し、これがアメリカ鰻だし、台湾で養殖したニッポン鰻を活きたまま飛行機で運び東京や大阪の店頭に並ぶ。ちなみに—20年ほど前に日本の業者がウバツーバ海岸に養殖場を開きフランスからの稚魚を育てた鰻を販売し日系人に喜ばれたが、結局のところ販売不振?で撤退してしまった▼と、鰻の世界も今や艱難辛苦だが、ニッポンウナギの産卵場所を発見した東京大海洋研究所の塚本勝巳教授は、シラスウナギの大激減を嘆き「親ウナギの漁獲規制をやらないと絶滅する」と厳しい意見なのだが—。(遯)