ニッケイ新聞 2012年4月27日付け
25日夜、下院が環境保護法改正案を審議し、上院が承認した案を変更した上で承認したと26日付伯字紙が報じた。上院で承認した案を承認する事を望んでいた政府にとっては敗北を意味する新改正案は、大統領裁可の時点で拒否権が行使される事が必至なようだ。
25日の下院が森林伐採を促進しかねない改正案を承認した事は、6月に開催される「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」の開催国として早期の環境保護法改正を望んでいた政府にとり、敗北の経験となった。
2009年開催のコペンハーゲンでの国連持続可能な開発会議に官房長官として出席したジウマ大統領にとり、世界が注目する法定アマゾンの森林保護をはじめとする環境保護は、前政権から続く国際公約だ。
ところが、今回下院が承認した改正案は、違法伐採された地域の回復などで大きく後退した内容で、リオ+20開催国としてはとても誇れないものとなってしまった。
現在の森林法は1965年に制定され、その後も改正を重ねてきたが、2008年の改正によって法定アマゾンなどにある土地の登記の徹底や違法伐採地の再植林などが盛り込まれてからは、同改正案承認前の伐採は再植林の原則適用となるのか否かなどが新たな問題となっていた。
特に問題となるのは、4区画(地域により各区画の大きさは異なる)以下の土地を所有する小規模農家による土地の開発で、傾斜地や山頂、川の近くなどの開発禁止区域(APP)が縮小されるなどの案件が盛り込まれたのが昨年から審議されている改正案だ。
この改正案は、昨年5月に下院を通過したが、政府側の意向を受けた上院は、より保護色の強いものに修正した上で12月に承認。これを良しとしない下院が、上院で承認した案を再び修正した上で承認した。
今回の下院で加えられた修正は農家選出の議員らの意向を強く反映し、川の周辺の緑地修復は前面削除の可能性もあったが、これらの部分は審議の最中に再修正され、川幅が10メートル以下の川の岸辺は15メートルまでを回復させるなどの条項を残したものの、それ以上の幅の川周辺の回復基準は明記されないまま。市街地を流れる川の周辺の緑を残すといった条項は削除された。
また、マンゲザルと呼ばれ、えびの養殖などに使われる海岸部の環境保護については、APPには含まないなど、恒常的な保護区域を縮小した。
これに対し、ジウベルト・カルヴァーリョ大統領府総務長官は26日、ジウマ大統領は、下院承認案の裁可の際、多くの点で拒否権を行使する意向であると明言。国会内でも、今回の承認案は不備が多いとして、3年をめどに案を練り再改正をとの動きが出ている。