ニッケイ新聞 2012年4月28日付け
大学入試における人種による特別枠の割当についての最高裁(STF)審議が行われ、満場一致で合憲と判断された。27日付伯字紙が報じた。
この裁判は、2004年にブラジリア総合大学(UnB)が採択した、定員の20%を黒人と褐色人、20人(人数は年毎に制定)を先住民に与えるというする募集要項に対し、民主党(DEM)が「違法である」として起こしていた訴訟を受けたものだ。
だが、25〜26日の2日間に渡ってSTFで行われた審議では、票を投じた10人の判事全員が大学側の人種枠の設定は「合憲である」とした。ディアス・トフォリ氏は票を投じなかったが、同氏も、ルーラ政権で連邦弁護士を務めていた時に、この問題に対し、合憲であるべきとの意思表示を行っていた。
人種や公立校出身か否かによる特別枠は、2002年にリオ州立大学(UERJ)が採択したのを皮切りに、現在まで少なくとも129の公立大学で採用していたが、同件の報告役をつとめたリカルド・レワンドウスキ判事は、全ての公立教育機関で合憲であるとしている。
この判決を受け、カルロス・アイレス・ブリット長官は「これから先ブラジルは、過去の歴史を言いつくろうのではなく、鏡に映すごとく正面から見つめていくためのより強い動機を持つに至った」と語った。また、唯一の黒人判事であるジョアキン・バルボーザ氏は「その存在に気づかない人さえいるほど深く社会に根付いてしまっている人種差別問題を打倒する良いきっかけになる」と見ている。
この満場一致での判決は人種問題を扱う運動家にとっても予想外のものだった。黒人問題活動家のジョゼ・ミリトン弁護士は「特別枠の対象にするか否かは人種ではなく、社会階層で決まるべきだ」とし、所得の低い人たちを対象とすれば、その7割を占める黒人と褐色人が自動的に恩恵にあずかるとしている。
また、「合憲」と票を投じた判事の中にも、人種による特別枠の設定は社会格差が正されるまでの一時的なものとすべきだという意見がある。マルコ・アウレリオ氏は「これまでの歴史が築いた負債の返済期間だ」と述べ、また、カルメン・ルシア氏は「現段階では必要なものだが、全てが平等かつ自由になることが最良の道だ」と語っている。
なお、判事の1人が黒人の判事が少ないと発言した際、傍聴席にいた先住民のグアラニ族の男が「先住民のことも話せ」怒鳴るなどして審議を妨害したため、強制退場させられる一幕もあった。