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ブラジルのカトリック人口減少=高校生では52%のみ=若者に科学の壁より低く=進化論に無抵抗の人増加

ニッケイ新聞 2012年5月1日付け

 サンパウロ総合大学(USP)教育学部のネリオ・ビゾ教授らの調査によると、高校生のカトリック信者は52%とブラジル全体より低い割合を示し、宗教と科学の間の壁が低くなってきていると4月29日付エスタード紙が報じた。

 ビゾ教授らは全国の高校生2365人を対象に宗教や進化論などについての調査をし、イタリアで4月に開かれた会議でその結果を発表した。回答者の平均年齢は15歳で、58%は男性、42%は女性だった。
 ビゾ教授は、15歳になれば、倫理・道徳面で正しいか否かを判断する内的基準を持っているもので、この年齢を過ぎてから自分の考えを変える事は難しいという。そういう意味で、この調査の結果は、ブラジルの宗教的な方向性や宗教と科学との関係などを考える上の指針となりそうだ。
 高校生が信じている宗教は、カトリック52・30%、ペンテコステ系プロテスタント(ブラジルでいう福音派)28・71%、その他のプロテスタント2・71%、黒人系宗教0・47%、エスピリタ0・89%、イスラム0・25%、無宗教7・48%など。
 自分が宗教的だと思うかとの問いには72・6%がはい、21・6%がいいえと答えた。
 4月20日付エスタード紙などによれば、2010年の国勢調査前に行われた2千家族対象の調査でのカトリックの割合は67・84%で、20年前の83・34%から大きく低下。ローマ・カトリックなど七つのカトリック系信者は、1950年には94%いたが、1980年代から減少し始め、1990年83・34%、2009年68・43%などの報告が出ている。
 その一方、ペンテコステ系など40教派を数えるプロテスタント人口は増加傾向にあり、09年は20・2%、10年は21・93%と報告されている。
 これらの数字を高校生の数字と比べると、カトリックの減少とプロテスタントの増加が更にはっきりするが、ビザ教授らを驚かせたのは、宗教上の教義や書物を信じている高校生が71・8%いる一方、自分の宗教は進化論を信じる事を拒否しないと答えた生徒も72・6%いた事だ。
 進化論は、無機質の世界から有機質の物体が作り出され、段々進化する過程で人間を含む動物や植物が出来てきたと考えるが、先の結果は、キリスト教では全ての種は神によって今ある形に創られたという創造論が主流という概念を大きく変えるものだった。
 ビザ教授らは、若者の間では宗教と科学の間の壁が一層低くなってきているといい、ブラジルの宗教事情はより流動性を高めているようだ。なお、カトリック信者1億3千万人中、洗礼を受けた後もミサなどに積極的に参加する信者は約5%の700万人とされている。