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大統領が民間銀行を批判=「貸付金利が高過ぎる」=労働者らはやんやの喝采=選挙の年に大きな弾みか

ニッケイ新聞 2012年5月3日付け

 メーデー(労働者の日)前夜の4月30日、ジウマ大統領が、民間銀行はもっと金利を下げよと訴えた。1日、2日付伯字紙によれば、中央労組(CUT)などは、大統領発言は自分達の主張を受け止めてくれた証しと受け止め、メーデー恒例の労組集会で大統領への賛辞を贈っている。

 中央銀行が経済基本金利(Selic)を9%まで引下げ、公的銀行も貸付金利を下げたのに、民間銀行が歩調をあわせようとしないのは許しがたい—。4月30日夜、ラジオやテレビで流れたジウマ大統領の言葉は、労働者達の内側に強い満足感を呼び起こした。
 第1期政権2年目にしてルーラ政権2期目の水準の支持率を得たジウマ大統領が、実務家の色合いより政治家としての色合いを強く出し始めた事を感じさせるのは、選挙参謀も務めたジョアン・サンタナ氏の文に何度も手をいれ、強い意味合いの言葉を多用した事。
 就任前から、第1期政権が終わる14年末の基本金利は実質年率2%まで下げると公言していた大統領だけに、インフレ調整後の実質金利が3・3%という数字は決して満足できないものだが、それ以上に大きな不満は、基本金利が下がっても民間銀行の貸付金利が依然として高い事だ。
 民間銀行側は、債務不履行が多ければ、貸付金利と基本金利の差(スプレッド)を大きくする事で貸倒れなどの危険を回避する必要があるというが、大統領は、基本金利は下がり、公的銀行も率先して貸付金利を下げている上、ブラジルの経済は安定しており、危機対策が必要との論は成り立たないと強気だ。
 メーデー前夜の大統領発言は、恒例の労働者集会を開いた各労組からも好意的に受け止められ、「金利の事をこれほど真摯に扱ってくれた大統領はかつてない」「我々の要求を受け入れてくれた」といった声が各地の集会で聞かれた。
 大統領の持論は、経済成長こそが経済危機を乗り切り国力を増強させるための鍵であるというもので、政府や公的銀行が消費を促すための個人融資や企業への資金調達を促進しようとしても、民間銀行が自己保身に走っていれば、国内消費や企業投資も尻すぼみになりかねないと考えている。
 新車販売が伸び悩む自動車業界が、民間銀行の金利引下げをと訴えたりして以降、ギド・マンテガ財相らも圧力を強め、民間銀行からの金利引下げを引き出したが、それでもまだ足りないというのが労働者やジウマ大統領の言い分だ。
 労組集会では、大統領による民間銀行批判を賞賛する声と共に、今こそ税制改革の時との声も上がっており、経済スタッフの対応も注目されるが、選挙の年のメーデーで労組から好意的な反応を引き出したのは大きな収穫。6月中には各党候補が正式に決まり、7月6日からは本格的な選挙キャンペーンも始まる。