ニッケイ新聞 2012年5月3日付け
アルゼンチンのYPF社の国有化に続き、ボリビアもスペインの電力会社を国有化したことが明らかとなった。2日付伯字紙が報じている。
ボリビアのエヴォ・モラレス大統領は1日、大統領府でのメーデーの祝福演説の際、電力会社のトランスポルテ・デ・エレトリシダーデ(TDE)社を国有化したと発表。陸軍に同社を差し押さえるための出動命令も下した。
TDEはスペインの電力会社レッド・デ・エレトリシダーデ・デ・エスパーニャ(REE)の傘下にあり、ボリビアの電気部門の74%のシェアを占める。賠償金額は明らかにされていない。
これで4月16日に起こったアルゼンチン政府による石油会社YPF買収につぐ、ラ米国によるスペイン企業の買収、国有化だが、事前に警告を重ねていたアルゼンチンの場合とは違い、予期せぬ出来事に、スペインのラホイ首相も1日夜の段階で「まずはよく調査したい」と発言するに止まった。スペイン国内では、政府がこの10年ほど財政援助を行っていたことによりボリビアと良好な関係が築けていたとの認識が強かった。
だが、モラレス大統領はTDEへのスペインからの投資が落ちていることが買収への大きな理由だとしている。実際、2006年には1760万米ドルあった投資額は2010年には280万ドルにまで急落していた。
モラレス政権はこの2年で水力発電所はじめ、電力関係のほとんどの主導権を掌握。モラレス大統領が就任した2006年には石油とガスの国有化を行い、ペトロブラス社に打撃も与えている。
だが、モラレス大統領への支持率はインフレへの懸念や国内の石油生産の減少などで落ちる一方で、2010年1月には69%だった支持率が約40%に落ちている。