ニッケイ新聞 2012年5月5日付け
ジウマ大統領とギド・マンテガ財相が3日、与党の代表や労働組合関係者、企業家達を招き、ポウパンサ(貯蓄預金)の利息計算のための利率変更を行う事を発表したと4日付伯字紙が報じた。
3日に発表された変更は、経済基本金利(Selic)が8・5%以下となった場合の利息を基本金利の70%+参考金利(TR)とするという点で、所得税や管理費が不要な点は変わらない。基本金利が8・5%以下でない時は、従来通りの利息がつく。この変更は3日までに預金されたものには適用されない。
銀行預金の中でも最も大衆向けとされるポウパンサは、利息計算のための利率が年6・17%+TRに固定されており、所得税や管理費も払う必要がないため、常に一定した利息を得る事ができるのが特徴だった。
一方、その他のファンドは、景気やインフレの動向によって変動する基本金利にあわせて利率が変わり、所得税や管理費を払う必要もある。このため、基本金利が高ければ利息も大きくなるが、基本金利が下がると、利息がポウパンサ以下となる可能性もある。そうなれば、ファンドに投資している顧客が、ポウパンサに乗り換える可能性は一気に高まる。
一方、各銀行が預かるファンドは、一部が供託金として中央銀行に払い込まれ、満期国債の払い戻しなどの資金源ともなるため、ある程度のファンドを確保する事は政府にとっても大切で、それが、基本金利を一定レベル以上下げる事を妨げる理由ともなっていた。
そこで、金融危機乗り切りのために基本金利を下げていた09年にルーラ前政権が着手しようとしたのが、歴代の大統領が手をつける事ができなかったポウパンサの利率変更。ところが、国民からの反発とインフレ抑制のための基本金利の引上げが始まり、利率変更の話は流れた。
ところが、欧州経済危機が表面化した11年以降、国内の景気減速化などもあって、再び基本金利の引下げを始めた事で再浮上したのがポウパンサの利率問題だ。
国際経済が不安定な中で国内消費を促進する必要に迫られた政府と中銀が、基本金利や工業製品税(IPI)の引下げを断行してきた事は周知の事実だが、基本金利を更に引下げるためには、ポウパンサの利率引下げが不可欠だった。
暫定令により4日から適用との報道は外国人投資家には予想外だったというが、3日の会合参加者は基本金利の更なる引下げのためとの説明に納得したという。暫定令での適用のため国会承認が必要だが、今後の成長を確保するための処置だから支持率低下もいとわないとの大統領の姿勢は、市場では好感を持って受け止められ、現在年9%の基本金利は、29、30日の通貨政策委員会後も引下げられ、年8%で年を越すとの観測も出始めている。