ニッケイ新聞 2012年5月16日付け
2011年11月に大統領が裁可した真相究明委員会が、16日の委員7人の就任式を持って公式に発足すると15日付伯字紙が報じた。委員会では1964〜85年の軍政下の人権侵害問題を中心に扱い、拷問や殺害の真の責任者など、当時の実態究明を進める事になる。
1946〜88年の人権侵害問題を扱うための真相究明委員会は、報復を恐れる軍部の反対などもある中で設置が決まったもので、委員7人の名前が発表された後も、報復のための委員会ではない事などが明言されてスタートする。
10日に大統領府が発表した委員は、カルドーゾ政権で法務相を務めたジョゼ・カルロス・ジアス氏、高等裁判事のジルソン・ディップ氏、ジウマ大統領を含む政治犯を軍政時代に弁護したローザ・マリア・カルドーゾ・ダ・クーニャ氏、ルーラ政権の検察庁長官だったクラウジオ・フォンテレス氏、国際人権委員会弁務官のパウロ・セルジオ・ピニェイロ氏、精神分析医のマリア・リタ・ケール氏、ユネスコと世界銀行コンサルタントで弁護士のジョゼ・パウロ・カヴァウカンチ・フィーリョ氏の7人。
11、12、15日付伯字紙によれば、同委員会では、軍政下の64〜85年に逮捕された後、拷問を受けたりして死亡した人や行方不明となっている人に関する情報収集と共に、拷問や殺害といった迫害を指示した人や実行者についても調査する事になる。
14日の時点では委員同士での方向性の調整は行われていないが、最初に委員長を務める可能性がある人物の一人であるディップ氏は11日、過去の事実が歴史の中に埋もれてしまわない内に記憶を掘り起こし、国の和解をもたらす事が目的であり、報復のための委員会ではないと明言。1979年の恩赦法の見直しは委員会の役割ではないとの見解は、他の委員も表明している。
また、責任追及の対象にゲリラ活動に走った左派活動家や支援者も含むべきとの声については、軍事独裁政権側の人物や組織の調査が責務との見方の方が強いようだ。
委員会の調査期間は2年で、あらゆる種類の文書を閲覧し、現場検分や関係者からの事情聴取を行う事などが認められている。ただし、特定の人物に刑を宣告したりする権限はなく、責任者の名前を含む、人権侵害の実態に関する報告書を作成するところまでがその任務となる。
軍政下の人権侵害問題は、前・現政権だけではなく、国が扱うべき問題である事を明らかにするため、16日の委員就任式には、大統領経験者のジョゼ・サルネイ、フェルナンド・コーロル、フェルナンド・エンリッケ・カルドーゾ、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シウヴァの4氏も出席する事になっている。