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家庭内暴力の告発数増加か=2月の最高裁判決受け=40年殴られ続けた妻も=女性殺害は2時間に1人

ニッケイ新聞 2012年5月18日付け

 パラナ州マリンガ市で、夫や子供に暴行されたと訴え出た女性の数が1〜3月だけで11年の約半数に達したと17日付G1サイトが報じた。8日付エスタード紙によれば、全国では、夫などに暴行された女性からの届出は11年中に4万8152件あり、12分に1人の割。一方、2010年には女性殺害が2時間に1人の割で起きた。

 私は40年間、夫のサンドバック代わりだった—。パラナ州マリンガの女性警察に届け出た後、裁判所の判決で夫が家から立ち去ったため、結婚以来初の平安を自分の家の中でも味わっているという女性の言葉だ。
 髪の毛を掴んで暴行され、荒々しくののしられる。肉体的、精神的暴力を受け続けても耐えていたのは「夫が好きだったし、もうやらない、酒も止めるとの言葉を信じていた」からだという。
 しかし、たまりかねて届け出たところ、夫は家から立ち退けとの判決。「今は家の中でも平安なの。これはこれまで一度も味わった事のないものよ」という女性は、マリンガの女性警察が扱った例の一つに過ぎない。同警察に届出のあった女性への暴行事件は、1〜3月に257件。既に11年全体の521件の半分に届く勢いだ。
 この変化は、女性への暴行急増というよりも、2月の最高裁判決で、被害者の女性でなくても相手を告発するのが可能になった事や、女性への暴行防止のためのマリア・ダ・ペーニャ法が知られてきた証拠だろう。
 8日付エスタード紙によれば、11年中の全国での女性への暴行告発は4万8152件で、女性への暴行は12分に1人の割で起きた。5月最初の週末にサンパウロ市で起きた、38歳の夫が23歳の妻を殴り、内一発が1歳2カ月の息子にも当たった事件もその例だ。警察は女性からの被害届け後に告訴する姿勢をとったが、女性への暴行は近親者によるものが多く、その後の生活への不安などを抱える女性が訴えずに終わる事も多い。
 この事が、女性への暴行が繰り返され、果ては殺害にまで及ぶ原因にもなるのだが、10年のブラジルでは、女性殺害が2時間に1人の割で起き、大半は恋人や夫による犯行というのも衝撃的だ。
 10年の場合、ブラジルでの女性殺害は10万人当たり4・297件、人数では4・4人。世界87カ国の調査では多い方から7番目という不名誉な記録で、州都での女性殺害の発生率は5・1で、全国平均より高い。
 女性殺害率の最高は、エスピリトサントの10万人当たり9・4人。2位はアラゴアスの8・3人、3位はパラナの6・3人。最低はピアウイの2・6人で、サンパウロやリオの3・1人と3・2人がそれに続く。
 女性殺害では、家庭内暴力被害と共に、夫や恋人が麻薬に絡んでいたまたはその影響で自分も麻薬売買に手を染めた人が殺される例が多い。殺される場所も、家の中や路上、学校が多く、バールや職場で殺される事が多い男性との差が目立つ。