ニッケイ新聞 2012年5月19日付け
11年11月にジウマ大統領が裁可した情報公開法(レイ・デ・アセッソ・ア・インフォルマッソン)が16日から発効となり、物議を醸している。
情報公開法は、国民に国、州、市町村、公社などの公的機関の活動に関する情報請求権を認め、20〜30日以内に回答を示すというもので、16日に正式に活動を開始した真相究明委員会の設置に関する法案と共に、昨年11月に大統領が裁可していた。
ジウマ大統領は16日朝、真相究明委員会の就任式の場を借りて情報公開法発効のための書類に署名。17日には官報にも正式に掲載された。
ジウマ大統領は、真相究明委員会の就任式で、「情報公開法は全ての国民に政府や国についての情報請求権を保障する」もので「透明性が確保されれば、公金の悪用や人権侵害などを有効に防ぐ手段となる」と発言。
また、納税者への説明責任と自ら範を示す意味とで、行政府関係者の給与などの情報を個人名や役職名込みで公開する事を決めた。ジョルジ・アジェ長官率いる国庫庁は国に関する金の流れの監査責任と共に、情報公開のモニター役にもなる。
ところが、この情報公開法については、16日付エスタード紙も「種々の疑問を抱えたまま発効」と報じたように、情報請求のあり方や公開される情報の範囲、請求が拒否される場合などについての明確な基準ができているとは言い難いままの見切り発車だ。
例えば、個々人の給与などの情報公開については、サンパウロ市でも同様の情報をサイトに掲載し、裁判所から削除するよう命じられた例がある。
これは、個人のプライバシー侵害につながり、電撃誘拐などの的にもされかねないという訴えを受けたもので、立法府である上院も16日、各職員への支払い明細は守秘義務に相当する情報と判断し、公開しない事を決めている。
司法府の場合、最高裁のアイレス・ブリット長官や検察庁のロベルト・グルジェル長官らは行政府の姿勢を評価しているが、全体的には個人情報の公開には消極的な雰囲気のようだ。なお、前述のサンパウロ市職員の給与明細公開については、最高裁で違憲か否かの審議が行われる事になっている。
17日付エスタード紙によれば、情報公開法発効当日の大統領府には、汚職疑惑で失脚したジョゼ・ジルセウ元官房長官やエレニセ・ゲーラ元官房長官など、元閣僚に関する情報請求が寄せられたが、各官庁が検察庁とのリンクに制限を加えたため、従来以上の情報は得られなかったようだ。
軍政下での政治犯迫害や警官による市民殺害といった人権侵害、不正入札や贈収賄などの汚職事件も、正しい意味の情報公開が進んでいれば防げるのは確かだが、そのためには、公開の可否などを適切に見極められる機関や人材も必要だ。