ニッケイ新聞 2012年5月19日付け
サンパウロ市地下鉄の歴史上初となった16日の3号線での追突事故を受け、サンパウロ市地下鉄は18日、地下鉄1号線、2号線、3号線の車間距離調整のための装置を取り替えると発表した。17〜18日付伯字紙が報じている。
16日午前9時50分に地下鉄3号線のペーニャ〜カロン駅間で起きたH—56号とC—20号の衝突事故は、「移動登録装置」と呼ばれる電子金属板に欠陥があったために起こった。
この装置は、車間距離を調整するためのもので以下の要領で機能する。地下鉄の場合、電車同士の間には、追突や衝突を避けるための〃シルクイト・デ・ヴィア〃と呼ばれる150メートルのスペースが割り当てられており、移動登録装置が読み取った電車の位置関係で、各電車の速度を自動的に調整する。正常に機能していれば、前の電車との距離が300メートル以内になると、通常の時速80キロから40キロに減速し、150メートル以内となると時速0キロとなり停止することとなっている。
16日の事故はC—20号が、H—56号との距離が150メートル以内になったにも関わらず時速40キロからの減速が起きず、逆に電車がひとりでに加速してしまった。運転手のロジェリオ・フォルナーザさんが慌てて緊急ブレーキを作動させたため、幸い死者は出なかったが、それがなければさらなる大惨事となる可能性があった。
この事故を受け、サンパウロ市地下鉄は16日のうちに事故が起きた区間の移動登録装置の取替えを行ったが、17日には、1号線、2号線、3号線で使われていた残り11の動登録装置の取替えも行った。関係者によると、この移動登録装置は問題が起きたときにのみ取り替えられる性質のもので、本来なら、2011年中に別のシステムと取り替えられる予定だった。
地下鉄4号線の車間調整システムは他の線と異なり、各電車のデータがコンピューターの放つ音波で次の電車に送られ、その情報に基づいて車間距離が調整されるというもので、アウキミンサンパウロ州知事は「世界でも最新鋭のもの」と自信を持ち、その安全性について、同線の運営をまかされているヴィア・クアトロ社のルイス・ヴァレンサ会長も「パリの地下鉄14号が似たモデルで1998年から運営しているが事故の報告は全くない」としている。だが、今回の事故の後、コンピューターが無人状態で行う車間調整システムを不安視する声は少なくない。
また、地下鉄3号線は1日約112万人が利用する混雑する線であるにもかかわらず、新しい路線の建設や路線延長への投資が優先され、11年度のメンテナンス費などへの投資が20%減額されていた。