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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年5月19日付け

 佐藤栄作首相の「(沖縄)祖国復帰が実現しない限り戦後は終わっていない」の発言が、多くの国民の共感を呼び、コロニアでも沖縄の人々から喜びの声が沸き上がった。あの昭和47年(1972年)5月15日の午前0時には、沖縄全島にサイレンや車の警笛が鳴り響き、祖国復帰に酔い痴れたものである。アメリカの統治27年に別れを告げ「沖縄県」になったのだから「慶び」も大きい▼この贈り物をして佐藤首相が勇退し、「今太閤」の田中角栄氏が内閣を組織したが、岡本公三ら武装ゲリガが、テレアビブ空港で銃を乱射し26人が死亡、73人が重軽傷という大事件も起き、ノーベル文学賞の川端康成が動機不明のガス自殺という暗いニュースも多い。返還を祝う式典で屋良沖縄知事は「復帰は、まさしく沖縄という新しい永遠の命の誕生である」と述べた▼県民からは「基地のない沖縄」の声が高らかに上がったし、この米軍撤退論は今に続く。復帰40年を迎えた式典で仲井真弘多知事も「普天間基地県外へ」と訴えたし、こうした考え方は県民の多くが抱いていると見ていい。首相は「負担軽減を」と誓ったけれども、これを実現するのは至難の技と云っていい。日本にある米軍基地の70%超が沖縄に集中しているのだから、事の解決は容易ではない▼ただ、日本の安全保障の立場からすれば、沖縄は軍事的に重要な地域なのも事実なのであり、この辺りを勘案しながらの解決しかあるまい。沖縄に暮らす人々の苦しみと痛みはよく理解できるが、中国と北朝鮮の軍事的脅威にいかに対処するかをも視点に入れた方策を生み出したい。(遯)