ニッケイ新聞 2012年5月23日付け
GDP(国内総生産)が2年連続で3%以下の成長となるのを防ぐため、ジウマ政権は21日、自動車部門の工業製品税(IPI)切り下げなどの新たな景気刺激対策を発表した。22日付伯字紙が報じている。
今回の景気刺激策は製造業や銀行の代表を交えて作成されたもので、IPIや金融取引税(IOF)の切り下げや社会開発銀行(BNDES)の貸付金利の引き下げが主となる。また、中央銀行に預けておく供託金も、年180億レアルが融資資金として解放される。
自動車のIPIは、排気量1千cc未満の車は7%課税を免税とし、1千以上2千cc未満のフレックス車は11%を6%、同ガソリン車は13%を6・5%、商用車は4%を1%に切り下げる。製造業者は見返りとして、販売価格を1〜2・5%値下げし、従業員の解雇も行わないと約束した。これにより、分割払いで購入する車の価格は7〜10%下がると見られている。
全国自動車工業(Anfavea)のクレドルヴィーノ・ベリーニ会長によれば、「新対策は自動車部門の要望に沿って作られた」もので、ギド・マンテガ財務相も、「自動車業界と銀行を信用し、一緒になって対策を練った」と、自動車業界の意向を強く反映させたことを強調している。
また、個人融資へのIOFは2・5%から1・5%に切り下げられた。これにより政府の税収は3カ月で9億レアルほど減るというが、IOFの切り下げがいつまで続くかは決まっていない。
また、BNDESによる企業向け貸付金利も、機械や設備購入では7・3%が5・5%、バスやトラック購入は7・7%が5・5%に下がり、返済期間は96カ月が120カ月まで延長される。また、大手輸出業者への貸付金利は9%が8%、技術部門も6・5%が5・5%に下がる。ルシアノ・コウチーニョ会長によると、政府はBNDESからの融資資金に450億レアルをつぎ込むという。また、政府の経済スタッフは、資金不足を訴えている建築資材部門にも同様の対策をとる構えがあるという。
一方、ジウマ大統領は同日、サンタカタリーナ州ラグーナでのカベスーダ橋の着工式に出席し、欧州経済は厳しい状況にあるが「わが国は経済危機に対して300%の備えが出来ている」と発言。「ブラジルは嵐が過ぎるのを待つのではなく、雇用創出やインフラ、社会福祉への投資を続けている」と語った。
今回の経済対策がまた消費促進型であることについて、MCMコンスルトーレスの共同経営者のジョゼ・ジュリオ・セナ氏は、「行き詰まりの兆候のあるモデルにこだわりすぎだ。国外の圧力が増す中でやるべきことは公共投資の増大だ」と指摘。2012年の経済が2・7%だった2011年を下回る成長に終わることを危惧している。