煙草で1日357人死亡=疾病治療費に210億レ=業界の対策の甘さに批判
ニッケイ新聞 2012年6月1日付け
ブラジルでは1日357人が煙草に起因する病気で亡くなっており、2011年に政府が喫煙に関連する病気の患者の治療につぎこんだ金額は210億レアルに及んだことがわかった。5月31日付伯字紙が報じている。
5月31日の世界禁煙デーにあわせて発表された調査結果は、オズワルド・クルス財団が非政府団体(NGO)の煙草抑制同盟(ACT)の要請でまとめたもので、11年に政府が煙草絡みの病気につぎ込んだ金額は同年の保健省予算の30%に相当し、煙草やその派生品からあがる税金の3・5倍にあたる。また、国内総生産(GDP)の0・5%にあたり、2014年までの政府のクラックへの対策資金の5倍にあたる。
また、煙草が絡む主要な病気15種による死者は2008年に13万152人を記録したが、これは1日平均357人が煙草による病気で死亡したことを意味し、同年の死因の13%を占めた。同年の疾病に占める喫煙者の割合は、喉頭がんの83%を筆頭に、肺がん82%、慢性肺疾患73%、口腔・咽頭がん70%となっている。
さらに、喫煙者の男性は非喫煙者男性より5・03年、喫煙者の女性も非喫煙者女性より4・5年平均寿命が短い。元喫煙者も女性で1・32年、男性で2・05年平均寿命が短い。
ACTのパウラ・ジョンズ事務局長は、煙草が国の経済に及ぼす影響を示す数字があればと長年願っていたとし、煙草の税率は他より高く、煙草産業に関連する雇用も多いから経済に貢献しているとの煙草業界の主張に疑問を呈している。
ブラジル煙草栽培者協会(Afubra)は、国家衛生監督庁での添加物規制協議の際、2010年に煙草業界が収めた税金は93億レアルで、純益は41億レアルしかなかったと発表したが、パウラ氏は納税額そのものも疑問だとした上、それが本当だとしても、国が支出した治療費の半分にも満たないと指摘。パウラ氏は、閉鎖された公の場での喫煙や煙草売り場での広告を禁止する法令の明確な基準作成などが必要だとしている。
この結果を受け、アレッシャンドレ・パディーリャ保健相は「煙草が保健財政に対して損害となっていることが改めてわかった」とし、公の場での禁煙などを強化するなどの対策に乗り出すことをほのめかした。
一方、煙草業界の会議所会頭のロメウ・シュナイダー氏は、「この数値は実情を正しく示していない」と反論。「煙草によって引き起こされる可能性のある病気での死者に占める喫煙者の数はどうやって調べたのか、煙草だけが原因だと言えるかは、はなはだ疑問だ」と語っている。