ニッケイ新聞 2012年6月5日付け
BRICS、新興国の雄といわれてきたブラジルの第1四半期の国内総生産(GDP)が、11年第4四半期の0・2%の成長に止まり、日本やドイツ、米国の後塵を拝したと2、3日付伯字紙が報じた。08年のリーマンショック以降の国際金融危機や欧州経済危機の影響が思った以上に長引いた上、南伯などの干ばつが数字に表れて来た。
ブラジルの第1四半期の経済成長は前期比0・2%に止まったと地理統計院(IBGE)が発表した1日は、世界各国の経済成長率も発表されたが、ブラジルの成長が一部のユーロ圏の国々を上回ったに過ぎなかった事は、世界中を驚かせた。
11年第1四半期との比較では、0・8%の成長となったブラジルは、中国の8・1%やインドの5・3%、ロシアの4・9%、南アフリカの2・1%にも大きく水を開けられ、日本やドイツ、米国にも遅れをとった。
ジウマ政権の5四半期における前期比の経済成長は、0・9%、0・5%、マイナス0・1%、0・2%、0・2%と、常に1%以下。前年同期比も4・2%、3・3%、2・1%、1・4%、0・8%で、経済が失速している様子が良くわかる。
第1四半期の不振は、前期比で7・3%、前年同期比では8・5%落ち込んだ農業の落ち込みが響いたが、それ以外に問題視されたのは1・8%(年率で7%余)の投資の縮小だ。
農牧業の落ち込みは南伯の干ばつが主要因で、7500万トンの予想が6500万トン程度で終わりそうな大豆や、米、トウモロコシ、綿などの減産が響いた。また、綿やコーヒー、トウモロコシの価格下落も農家の減収に輪をかける。農業部門は、北東伯の干ばつの影響が加味されるため、第2四半期も大きな伸びは期待できない。
一方、予想以上の伸びを示したのは工業の1・7%だが、これはその前の3四半期が0・4%〜0・8%のマイナス成長だったため。在庫処分的に売り出しを行った事もプラスに働いたが、投資の減少などを考えると、経済の牽引役であれる期間はそれほど長くないとの予想も出ている。
サービスの0・6%や家庭消費1%、政府支出1・5%といった伸びは全体がマイナス成長となるのを回避させたが、輸出が0・2%伸びたのに対し、輸入は1・1%伸び、ギド・マンテガ財相をして、輸入がGDPの一部を食いつぶしたと言わしめた。
家庭消費は前年同期比で2・5%伸び、所得が6・5%伸びた事を反映しているが、債務が所得の50%近くを占めるようになった事で、消費を抑制し、貯蓄に向ける動きも出てきている。
中国の成長が予想を下回り、コモディティ価格が下落している事や、鉄鋼業などの投資減少が今後の成長を抑制しかねない中、今年の経済成長は昨年以下の1・5〜2・5%との声も出始めた。