ニッケイ新聞 2012年6月6日付け
クルゼイロ・ド・スル銀行が、推定13億レアルの使い込み隠蔽のために、最低30万件の貸付偽装を行っていたことが明らかとなった。5日付伯字紙が報じている。
一連の不正は中央銀行(BC)が4月に発見したもので、BCは5月下旬に7日の期間をもうけて使い込みの補填に当たらせた。同行が最初に助けを求めたのは信用保証基金(FGC)だったが、補填額が高額のため断られた。
その後、クルゼイロ・ド・スル銀行の買収に名乗りを上げたのがBTGパクチュアル銀行で、5月29日から6月3日まで交渉を行った。BTG側は、パンアメリカーノ銀行の使い込み額が当初の見込み額25億レアルを大幅に上回る43億レアルだったという前例と同じ轍を踏むのを恐れ、使い込み金額の保証を求めたが、FGC側がこれを認めなかったため、破談に終わった。
これを受け、リオデジャネイロの連邦警察は4日、使い込みと貸付偽装の実態を捜査し、クルゼイロ・ド・スル銀行幹部による犯罪の可能性を確かめるべく捜査を開始した。銀行幹部は更迭され、財産も差し押さえられている。
またBCは4日朝、クルゼイロ・ド・スル銀行に対し、特別暫定監査(Raet)を適用することを決めた。同行の運営を担当する事になったFGCは、監査会社のプライス・ウォーターハウス・クーパーズに実際の使い込み額を明らかにするように依頼し、60日以内にその結果が出ると見ている。
FGCによる運営期日は180日で再延長も可能で、FGCのアントニオ・カルロス・ブエノ局長が「こんなに長い期日は必要ないだろう」と語るように、売却の可能性も高いようだ。同行はこの間も通常通り業務を行うが、中央銀行の仲介で同行の証券価値の低下は免れないため、FGCは当面の株取引の中止を要請している。
クルゼイロ・ド・スル銀行は、資産がブラジルの金融機関の0・22%、預金額も0・35%と小さな銀行だが、13億レアルの使い込みのほか、2012年第1四半期に3700万レアルの損失を計上していた。仮に倒産となると、2008年の金融危機以降、ブラジルでは6番目となる。
なお、Raetの適用で正式に経営権を奪われたルイス・オタヴィオ・インディオ・ダ・コスタ元頭取は、ジョゼ・セーラ氏が大統領選に出馬した際の副大統領候補だったペドロ・デ・シケイラ・インディオ・ダ・コスタ氏のいとこ。サンパウロ州エンブー・ダス・アルテスに6千平米の豪邸を構え、世界的な有名歌手のコンサートを自宅で開くなど、豪勢な生活を送るサンパウロ州社交界の顔として知られていた。