ニッケイ新聞 2012年6月6日付け
世界環境デーの5日、地球温暖化に対して何の対策も採らない場合、2050年までのラ米とカリブ諸国の被害は年1千億ドルとの米州開発銀行(IDB)の試算結果をエスタード紙が報じた。
2050年までの被害額をドルで試算するという試みは、国連のラテンアメリカ・カリブ経済委員会(Cepal)と約100カ国で活躍する環境団体のWWF(World Wildlife Fund)の協力も得て行われたもので、5日にはワシントン、20日にはリオ市で開かれる国連持続可能な開発会議(リオ+20)でも発表される。
温暖化による被害の例としては、ブラジルにおける水力発電用ダムの貯水量減少や海水面の上昇などが挙げられ、熱帯気候の地域やブラジル、ボリビア、アルゼンチン北部などで予想される農産物の被害も無視できない。
IDBの気候変動部門を統括するヴァルテル・ヴェルガラ氏によれば、被害を軽減化するには気候や環境の変化に適用するための対策が不可欠で、ダムの貯水量減少は原生林の保護や再植林などによって改善でき、農産物については気候変化に応じた種を選ぶ事で生産量を確保する事も可能だという。
だが、これらの対策は対症療法的なもので、より必要なのは温室効果ガスの排出削減努力だ。
IDBによれば、今世紀末の大気温上昇を2度以下に抑えるためには、温室効果ガスの排出量を最低でも2050年までに一人当たり2トンに減らす事が不可欠で、年1100億ドルの投資が必要だという。