ニッケイ新聞 2012年6月7日付け
サンパウロ移民博物館で開催される『移民祭り』は最もブラジルらしい?イベントと言ってもいいだろう。移民国家を形成してきた各国コロニアの団体が民族舞踊や食を紹介、場所自体が元移民収容所でもある。沖縄系グループが日系コロニアを代表する形で出場してきたのだが、どうやら今年は日系のステージがなく少々淋しく思ったところ▼「沖縄=日本」と思っているブラジル人は多い。南麻州カンポグランデはそれを代表するし、日系の8割を沖縄系が占めるアルゼンチンでも確かそうだろう。先月の本土復帰40周年を祝うニュースを見ながら、アメリカ世に移住した戦後沖縄移民らはどう身を処してきたのかなと思った▼大阪市大正区では、地域活性化で「おきナニワんプロジェクト」が始まっている。25%が沖縄系。地元はどうか知らないが、東京、大阪するコリアンタウンと比べてもその歴史は知られていない。移住が始まり1世紀が経つというが、どうやってアイデンティティの保全をしてきたのかが気になる▼二、三世にルーツの地名を聞くと「さて…」と頭を掻かれてしまう。これが沖縄系であると話は違う。高い割合で、日本語を話せなくても(うちなー語は話せるのかも知れない)郡や村まで答える。文化の違いだが、県人会の将来の明暗まで感じさせる▼本土復帰前後に思春期を過ごした世代は「日本人か沖縄人か」というアイデンティティに悩んだという。現在「日本人より沖縄人でありたい」と主張する人が多いとか。移民や県系人は、ジャポネスと呼ばれたらオキナワーノと訂正してきたのだろうか—などとボンヤリ考えた。(剛)