ニッケイ新聞 2012年6月15日付け
失業率は過去最低との肯定的な情報が流れる一方、工業界では3、4月と連続して雇用や就業時間が減少しており、短期的な見通しはあまり明るくないと13日付エスタード紙が報じた。
地理統計院(IBGE)によると、4月の工業界の雇用は、3月比で0・3%減少し、今年の累積では0・9%縮小。就業時間も、4月は3月比0・9%、累積で1・4%減少した。
2011年の国内総生産(GDP)の伸びが3%を割り込んだのも、工業不振が一因と言われていたが、経済が減速した時、最後になって動くとされる雇用の減少は、11年後半からの経済減速化の影響が長引いている証拠ともいえる。
IBGEコーディネーターのロドリーゴ・ロボ氏によると、雇用の減少よりも就業時間の減少の方が気がかりで、就業時間の減少率が雇用のそれを上回る時は、近い将来、解雇が起きる可能性が高いという。
そういう意味では、雇用の減少が0・3%(累積で0・9%)だったのに対し、就業時間は0・9%(同1・4%)減少という数字は、時短や集団休暇などの生産調整策が採られた結果で、それでも状況が改善しなければ、解雇や希望退職という事態に至る前触れと理解する事ができる。
この流れを如実に示すのは、7日付エスタード紙が掲載したGMの希望退職者募集と自動車業界の在庫は依然43日分という記事だ。
自動車業界の在庫が膨らみ、活性化のために工業製品税(IPI)減免税が行われたのは5月だが、業界は、減免税と引き換えに自動車価格の引下げと雇用の維持を約束したはずで、S10と呼ばれる車の生産ラインを3交代制に戻すというアナウンスと共に公表された希望退職者の募集は関係者を驚かせた。
GMは、希望退職者の募集は生産性を高めるための処置で解雇には当たらないとしているが、自動車業界の在庫は、減免税で販売が増えたといわれた後も4月と同じ水準で、国際的な金融危機が勃発した2008年11月以降の最高を維持。
工業界の雇用減少は、14地域中8地域で報告され、工業への依存度の高いサンパウロ州では今年に入って3・2%減少。部門別に見た場合は、服飾6・8%や革・靴6・6%、金属製品5・5%、繊維5・3%など、18部門中11部門で雇用減少が報告されている。
工業界の不振は為替の不均衡や生産性の低さ、生産コストの高さなどによる国際競争力の不足が原因で、3日付エスタード紙は、電気代やガス代の高騰で採算が合わなくなったアルミ業界では2工場が閉鎖、もう一つも閉鎖を検討中、ガラス業界でも同様の動きが出ていると報じている。
13日付エスタード紙は、製造業の生産は0・4%減だが、就業時間がそれ以上減ったため生産性は若干向上とあるが、不安定感は拭えない。