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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年6月15日付け

 「新聞はこない、苦情を言おうと電話してもつながらない。ニッケイ新聞は潰れたのか」。そんな声をこの2週間というもの、あちこちから聞かされ本当に気が滅入った。平身低頭するしかない。とくにトランスフォーリャ社を通して配達している地域の読者には迷惑をおかけした▼配達業務は弊社ジレトリアが直接管理している部門であり、編集部としては連日、読者からの苦情をジレトリアに伝えに行き、喧々諤々の口論をしたが、それでも現状に至ってしまった…▼紙面の記事内容に関しては編集部で何とかできても、購読契約、広告、配達のことに関しては、なんとも仕様のないことも多い。忸怩たる気持ちだ▼成り行きを心配してくれる声を聞きながら、邦字紙と読者とは運命共同体だと痛感する。戦後移住60周年を迎えるということは、20歳で渡伯した青年が80歳を迎えるということだ。足元がよたよたするのは避けられないのか▼見回してみれば、雑誌『ブンバ』も1年ほど出ていないようだし、来年6月に創刊50周年を迎えるはずの『実業のブラジル』さえも昨年末以来パッタリ出なくなった。なにか百周年という一つの気持ちのピークを越えて、あちこちで力が尽きてきた印象を受ける▼20年前にリオで開催されたエコ92の時、コラム子はパ紙で研修記者を始めた。あの時代に「コロニア」と呼んでいた全伯的な空気、例えばコチア、南伯、南銀などがあいまって醸し出していた活気は、今世紀に入ってからのどこかの時点で消滅してしまったように感じる▼104周年目の移民の日を目前に控え、「次の段階への生まれ変わりの時期」であると切に思いたい。(深)