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援協=やすらぎホームが事業縮小=法的規制で新運営体制に=12人が〃自活〃を実施=援協役員「閉鎖はしてない」

ニッケイ新聞 2012年6月16日付け

 サンパウロ日伯援護協会が経営する、精神障害者のリハビリテーションを行う社会復帰センター「やすらぎホーム」(洲崎順経営委員長、佐々木義雄ホーム長)がこのほど事業を縮小し、新たな運営方法で再スタートを切っている。同ホームでは2001年に制定された法令で、精神病院以外の施設で精神病患者の入院治療を行うことが不可能になった。ホームがあるグアルーリョス市当局から指示があった昨年以降、市と援協間で協議を重ね、入居者を老人ホーム、自宅、ホーム敷地内の別施設へ移すという対応が取られることになった。

 「やすらぎホームが閉鎖したのではないかという噂が広まっている」。援協の坂和三郎、与儀昭雄両副会長、洲崎経営委員長が12日に本紙を訪れ、「これまで多くの日系団体に支援を頂いてきた。噂が原因で、今後は支援が必要ないのではという誤解を生まないよう説明したい」と話した。
 説明によれば、01年の法令に従えば、単に通院患者であれば引き続き対応が可能だった。しかし同ホームは市の中心から遠く交通の便が悪いため、各地に点在する入居者の自宅から日々の通院はほぼ不可能だった。
 1977年に設立されてから35年、同ホームは身の回りのことを自分ですることが困難な精神障害者を受け入れ、薬の投与などの治療に加え全面的に生活の面倒をみてきた。佐々木ホーム長によれば、数十年ずっとホームに入居していた人もおり、移転を拒んだ入居者もいたという。
 今年に入り入居者の家族に向けて説明を行い、話し合った結果、28人の入居者のうち家族で引き取り可能な入居者は自宅へ、高齢者4人は「カンポスさくらホーム」に移ることに決まった。
 その他30〜50代で身寄りがなかった12人入居者の対応が課題だったが、ホーム敷地内にあった3つの別施設を改修して家財道具一式を揃え、そこで治療を行うのではなく、4人ずつに分かれ自分たちで共同生活ができるよう指導をしていくことになった。
 12人はCAPS(Centro de Acao Psicossocial)と呼ばれる心理社会的支援を行う施設にも通いながら自活を目指し、今後はこの12人の寮生の支援のみに事業を縮小することになる。
 寮生のうち9人は全く入居費を支払うことができない。残り3人についても全額が支払えるわけではないため援協が残額負担する必要があり、厳しい運営状態が続くことは今後も変わらない。
 先月24日に行われた援協の定例役員会でこの件について報告した菊地義治会長は、「この12人の社会復帰が見込めるようになれば、規模も拡張できると思う。市と提携し、精神障害者への支援に善処していく」と今後の方針を示した。