ニッケイ新聞 2012年6月20日付け
ジウマ大統領が軍事政権時代に受けた拷問はサンパウロ市とリオの警察によるものだけではなかったことが判明し、真相究明委員会が動き始めている。18〜19日付伯字紙が報じている。
ミナス・ジェライス州の「エスタード・デ・ミナス」紙とブラジリアの「コレイオ・ブラジリエンセ」紙は17日、ジウマ大統領が1972年にミナス州ジュイス・デ・フォーラ市で軍警から受けた拷問について掲載した。これは、ジウマ氏が南大河州の鉱山エネルギー局長だった2001年にミナス州の人権委員会に証言したが、公表されてなかったものだ。
ジウマ氏は1970〜72年の約3年間牢に入れられており、サンパウロ州とリオでの拷問は知られていたが、ジュイス・デ・フォーラには72年1月に移され、所属していた極左政党の全国自由部隊(コリーナ)の元リーダー、アンジェロ・ペズッティ氏の逃亡計画について尋問するための拷問を受けた。
拷問の方法はパウ・デ・アララ(逆さ吊り)や電気ショック、木刀による殴打などで、ジウマ氏は、顔を殴られたため、歯列がずれるなどの後遺症が残った。ジウマ氏は2010年の大統領選挙の際に歯列の手術を行っている。
ミナス・ジェライスでの拷問の件が知られたのははじめてのことで、真相究明委員会のジョゼ・カルロス・ディアス氏とマリア・リタ・ケール氏は18日にサンパウロ州で話し合いを行い、同委員会補佐官でミナス連邦大学のエロイザ・スターリング教授らをベロ・オリゾンテに派遣し、同州人権委員会に残された記録を調査することを決めた。「報道された証言は明らかな人権侵害で調査の必要がある」とディアス氏は語っている。
同委員会のジルソン・ディップ氏は、「とても重い体験だ」と語り、現時点ではこの件でジウマ氏にさらなる事情聴取をする必要はないとしたが、今後聴取を行う可能性は否定していない。
大統領はこの報道に関するコメントを現時点で一切行っていないが、2001年にジウマ氏の証言を聴取した哲学者のロブソン・サヴィオ・レイス・ソウザ氏は、証言時の様子について、拷問に話が及ぶと泣きはじめ、しゃくり上げ続けたので、証言の途中で「これ以上話す必要はない」と止めたという。
ソウザ氏は2000〜04年にミナス州の賠償委員会の委員長をつとめたが、「軍政時代の拷問による賠償請求を行う人を200人ほどと見積もっていたところ、記録に残っていなかった犠牲者が殺到し、最終的に約800人が賠償金を受けとった」と語っている。