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第5回=若い世代への浸透が必須=間口を広げるのが課題に

ニッケイ新聞 2012年6月20日付け

 —若い人が貪欲に外国文化を受け入れ、美味しいものにはお金を払う人たちも増えてきた。一方、「すき家」が店舗展開しているのは若い学生の多い場所。「バールで15レより牛丼10レ」。若い人が醤油味の牛肉と米をかきこむ。箸を使って。この『丼文化』が10年20年と続けば、日本食を楽しむブラジル人の裾野は広がるでしょうか。
 【久慈】
〃学校〃に通ってもらってる。就職してある程度お金使えるようになったら、もっと高い日本食に移行すると思う。20年したら「南部美人」飲んでもらえる。
(全員爆笑)
 【久慈】このパターンって他の国にはないんじゃないかな。「すき家」100店が実現したらすごいことになる。
 —バルエリ(サンパウロ市から西に約24キロ)を除いて、あと7店は全部サンパウロ市内。これからどういう形で広げていくんですか。
 【高山】
基本的には物流の問題があって広い地域に急展開できない。肉はセントラル・キッチンで切って、毎日配送する。まずはサンパウロプラスアルファの場所から。但し全国に早く展開したいですね。
 —日系人の多いモジとかスザノはどうですか。
 【高山】
大体20店舗くらい見えてきたら、次が見えると思う。チェーン店は大体10店舗以上でないと成り立たない。
 —客の年齢層ってどのくらいなんですか?
 【高山】
ブラジル人でいうと若い人が多い。
 —そこは非日系と日系を分ける?
 【高山】
日本食を安く食べられるから日系人の場合は年配の方も多い。ブラジル人の方は牛丼がどんなものか分からないから少ない。若者は新しいもの好きだし安いしで来る。
 —高い年齢層は将来的に期待できないですよね。
(一同笑い)
 【高山】ただ1号店(ヴェルゲイロ店)が約2年になりますが、徐々にブラジル人、特に白人系の方も来られるようになったのは嬉しいですね。
 —日本で出稼ぎ経験のある人が何万人っていうレベルでブラジルにいる。そういう人達は、日本で高い日本食ではなくて、ラーメンや牛丼なんかを食べてますよね。そういう人も多いですか?
 【高山】
「日本で食べた」っていう人もいる。
 —彼らがもっと日本食の宣伝をしてくれればいいけど、じゃあ日本で「南部美人」飲んでたかっていうとそれはない。そこは期待できない部分ですね。
 —色んな形の広がり方が見えてきました、ブラジルの日本食の展望をお話頂けますか。それぞれのメーカーさんの期待や希望も含めて。
 【森】
うちの戦略で一番成功したのがアメリカ。そういう意味では、色んな意味で基準になっている。アメリカの人口が今大体3億人で、ブラジルは約2億人。人口比は3対2なんですけども、醤油の使用量は10対1。ブラジルはそのレベル。うちだけじゃなくて、現地メーカーも入れた全体でその比率。
 —まだまだマイナーですね。
 【森】
この数字を見ると、醤油が色んなものに使われるようになったとはいえ、明らかに日本食から出ていない。間口を広げるためには、やっぱりブラジル人、イタリア、ドイツ系…日本文化を知らない人達への啓蒙が絶対に欠かせないと思うんですよね。色んな文化を受け入れる若い世代、日系人もいる。
 —たしかに他の国にない部分ですよね。
 そういう意味で本当にブラジルは複合型。現在のところ、これまでのどの戦略が正しいっていうのもない。色んな戦略をケース・バイ・ケースで生み出し、上手く使い分けるのが一番いいと思うんですけど、それには機動力も投資力も必要。簡単ではない。
 だから、まだまだ伸びる部分は沢山あると思う。ブラジルが五輪やW杯を経て、様々な価値観を受け入れることで品質や管理面で変わってくる、あるいは変わらざるをえないという時期も来ると思う。(つづく)

写真=ブラジル「すき家」1号店(ヴェルゲイロ店)はサンジョアキン駅前にある