ニッケイ新聞 2012年6月22日付け
「朝早く起きることを楽しみに、夜寝る事ができるようになりました。とても良い事を始めてくれた、と手を強く握って感謝されたことが昨日のことのように目に浮かびます」とラジオ体操連盟の小野祥子副会長から聞いて感じ入った。24年ほど前にアクリマソン支部を始めた頃の話だそうだ▼感謝したその女性は80代半ばで、息子に連れられて地方から出てきたばかりだった。同公園周辺には知り合いがおらず、立派なアパートの中で毎日寂しい思いをしていたところへラジオ体操が始まり、皆と知り合いになれ一緒に身体を動かすようになった▼大会参加者の多くは80歳前後の女性であり、伴侶に先立たれた人も多いだろうと推測した。家の中で一日中NHKばかり見ているより、毎朝1時間ほどみんなと顔を合わせ、身体を動かして近況報告しあうと、爽やかな気分で一日を過ごせるという▼ラジオ体操は身体だけでなく、精神衛生上も効果が高いようだ。特に子供と離れて都会生活している高齢者には精神安定剤と言っていい。高齢化が進む一般社会にとっても意義深い活動だ▼奥ソロから夜行バスで参加した浜田満栄さん(85、二世)は背筋がピンとしていて動きも溌剌、一見すると70代にみえる。「ラジオ体操を始めて以来、風邪を引いたことがない。今でも朝、自分で車を運転して体操しにいく」というので驚いた▼非日系もちらほら混じる帰りのバスで「同じユニフォームを着ていると、知り合いでなくとも道で自然と挨拶している。ラジオ体操はグランデ・ファミリア」とポ語で話している声を聞き、「日本の心」が伝わっている気がした。(深)