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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年6月26日付け

 近頃の日本では、わけのわからぬ人殺しが多い。この10日には大阪の繁華街ミナミで36歳の礒飛京三が、「誰でもいいから殺したい」と通行人2人を刺し殺した。逮捕されると、殺人事件を犯せば死刑になると思ったと供述しているが、このような事件は大阪だけではない。2008年には東京の「秋葉原通り魔事件」があり、7人が死亡し十数人が負傷し犯人の加藤智大には、東京地裁が死刑の判決を下している▼この事件も、殺人の動機があいまいである。自分も死にたい—と思ったそうだが、そのためにトラックと刃物で次々に見知らぬ人々を殺した理由が、一般の人々には、どうもわからない。勿論、昔も「阿部定事件」のように愛人を扼殺し、局部を切り取った猟奇事件もある。だが、もっと大きいのは「津山三十人殺し」であり、日本の犯罪史上前代未聞の殺戮事件とされている▼1938年に岡山県で起きたこの虐殺も謎が多い。豊かな家に生まれ育った都井睦雄の日常はごく普通の村人に見えたが、どうやら昔の恋人?が結婚した(異説もある)のを妬み大量殺人に走ったらしい。部落の家々を回り9連発の猟銃や日本刀で問答無用とばかりの殺人鬼と化し、山の峠で遺書を書き銃で自殺を遂げてしまい、犯罪の動機も細かいことは警察も把握していない▼母や父が幼児の頃に死亡し祖母に養育されたのだが、「一人だけ残すのは可哀想だから」と最初に殺したのだが、このときには斧で虐殺したらしい。当時の有力新聞は号外を発行したらしく大騒ぎになったようだが、連続殺人の起こった津山では70年が過ぎた今も事件の話はタブーで禁句なのだそうである。(遯)