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債務不履行が12年で最悪に=個人8%、全体も6%=クレジットカードでは3割=貸付額はGDPの半分に

ニッケイ新聞 2012年6月28日付け

 中央銀行が26日、5月の債務不履行が、個人レベルで8%、全体でも6%など、過去12年間で最悪の記録に達した事を発表したと27日付伯字紙が報じた。

 返済が90日以上遅れる債務不履行の増加は、2000年以降4度目だが、経済基本金利(Selic)引下げで銀行も貸付金利を下げ始め、失業率も低い中での債務不履行増加は、ブラジル史上でも初めての出来事だ。
 債務不履行がここ12年で最悪となった事は、ブラジリアでの世界各国の中央銀行関係者の会合で、国際決済銀行(BIS)総支配人がクレジット消費増加に警鐘を鳴らした事(26日付本紙既報)を思い出させる。
 2011年5月以降、債務不履行増加率が最も高いのは自動車ローンで、11年5月の3・6%が、この5月には6・1%になった。
 また、個人レベルの債務不履行で最も多いのはクレジットカードによるもので、90日以上の返済遅れは29・5%。特別小切手での債務不履行も11・3%に増えており、国内消費促進のためのクレジット増加という政府の景気刺激策が限界を迎えている事は、専門家も指摘している。
 債務不履行の増加は、好景気や所得向上の波に乗ってクレジットカードの利用が増えた事や不動産ブームなどにも関係している。2008年に起きたリーマンショックやそれに続く国際的金融危機、欧州での経済危機による景気後退や経済の減速化を挽回するため、景気刺激策として導入されたクレジットの増加がこれに輪をかけた。
 銀行業務集中サービス会社(Serasa)のルイス・ラビ氏は、金利引下げや失業率低下の中での債務不履行増加は、2010年のローンや融資急増が原因と分析。
 同氏によれば、2010年に自動車ローンを組んだ人やリース会社を利用した人の45%は、債務不履行になる可能性が50%。返済期日を過ぎた負債のある人の内、債務不履行額が月収以上という人は3月末の時点で64%いたという。
 26日付エスタード紙によれば、BIS総支配人がブラジルのクレジット消費増加に警鐘を鳴らしたのを受け、ブラジル中銀の理事の1人が、中銀はクレジットが適正な範囲を超えていないか否かを常に監視しており、ブラジルでのクレジット増加は危険なものではないと反論しているが、経済の減速化や負債を抱えた人の増加は懸念材料。飽和状態に近い労働市場では、製造業などで希望退職者の募集や解雇も起きており、債務不履行の増加は続く可能性も強い。
 5月末の15〜90日の返済遅れは6・7%でここ3カ月の最低となったが、個人や法人への貸付総額は国内総生産(GDP)の50・1%にあたる2兆1300億レアルという中での債務不履行増加の現実は重い。