ニッケイ新聞 2012年6月28日付け
ブラジル日本商工会議所(近藤正樹会頭)の6月度定例昼食会が15日、サンパウロ市内ホテルで開かれ、約130人が参加した。
大部一秋在聖総領事の送別会も兼ねた。「昨年はブラジルから日本に75億ドルの投資があり、すごい勢い。日本が戦うべき舞台はブラジルにあり、日伯は黄金の相互補完関係にあると思う」と離任あいさつ、大きな期待を示した。
ブラジル三菱モータース、スズキ・ヴェイクロス・ド・ブラジルの創立者で現在は会長のエドアルド・デ・ソウザ・ラモス氏は、「ブラジルにおける日本ブランドの立ち上げ—ソウザ・グループと三菱自動車」を題して講演した。
ソウザ氏はフォルクス・ワーゲン社の販売員として仕事を開始し、その後鞍替えしてフォード社の車を販売する事業者に。好調に売り上げを伸ばし9店舗まで拡大したものの、経済の変動に翻弄され、全財産を失うまでに追い込まれた。
しかしそこから方向転換し、「危機は一時的なものと信じ、この国の可能性にかけようと思った」。ブラジルへの進出を希望する新たな自動車メーカーを模索し始め、三菱自動車の国内生産許可を得るまでに至った前後を紹介した。
「ブラジルは常に優れた国と自国を比較し、倣おうとしている。日本の技術や生産性、手腕を学べば、ブラジルの世界での競争力が上がる。もっと進出してきてほしい」と会場に呼びかけた。
一年の任期で今年4月に着任した在ブラジル日本大使館の西島章次公使は、「国際的観点からみた日本経済の今後の課題」と題して講演した。
ラテンアメリカ経済論専門の西島氏は神戸大学経済経営研究所の教授を務め、30年前に2年間サンパウロ大学で客員教授を務めた。
「1990年代から日本の経済は停滞している」と強調し、世界のGDPに占める日本の割合は1994年に17%だったのが2010年は8%、世界の貿易に占める日本の割合は1980年の7・2%から2010年には4・8%まで低下している例を挙げた。
その要因として、少子高齢化、労働生産性の低迷、国際競争力の低下や直接投資流入の少なさなどを指摘し、「日本の対外直接投資は国際的にみても少なく、インフラやサービス部門での競争力不足やM&A(企業の合併や買収の総称)に不慣れなため、グローバル化を十分に享受していない」と現状を説明した。
ブラジルについては、日本からの距離やインフラ改善などの問題があるものの、「中長期的にみて、輸出基地となる可能性がある」。
進出のためには長期的な目線で、現地の商慣行の熟知、人材を日本人で固めないなどの徹底した現地化、借り入れに依存しない充分な自己資本、現地での採算や現地通貨での利益重視、危機管理能力と情報網、適切なパートナーとの関係の構築、日系社会の活用などが重要だとアドバイスした。