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コラム 樹海

ニッケイ新聞 2012年6月28日付け

 「人口に膾炙する」とは、膾や炙り肉(魚)が、誰にも美味に感じることから、話題になり知れ渡ることを意味する慣用句。ビザが緩和されるほど訪米が増えたブラジル人らが、両国の日本食を比べ「どうも違うぞ…」と気付き始めたと聞き、文字通り—と膝を打った。かつてのステイタスに胡坐をかき続ける店は容赦なく淘汰されてほしい▼本紙6面で今月14日から掲載した『座談会〜ブラジルの日本食を占う』での発言だ。普及に奮闘する醤油(キッコーマン)、日本酒(南部美人)、牛丼(すき家)の代表3者にブラジルゆえの難しさや今後の展望を語ってもらった。〃本物〃の味を伝えたいというのが共通した思いだが、それぞれの方向性(戦略)は違う▼現地メーカーにシェアを占められている醤油は「多様性」、差別化を図り高級感を売りにする日本酒は「特殊性」をキーワードにしているようだ。日本食の敷居を下げるのに大きく貢献しそうなのが牛丼だろう。裾野が広い中産階級以下に対する「浸透性」と人口構成の一番太い若者をターゲットにすることで「将来性」も見込める。いずれにせよ、それぞれの形でブラジルでの日本食の豊かさに寄与するに違いない▼企業努力やニーズ以外の部分で、ブラジル側の税制、法的な問題も多いと座談会は締めくくる。現在もサントスでコンテナが止まり、巷の食品店での枯渇ぶりは悲しい。そうした問題をクリアすれば、可能性は無限に広がりそうだが…。新聞の遅配問題でまだ目にしていない読者もおられると思うが、今の日本食に満足されていない方には是非ご一読頂きたいと思う。(剛)