ニッケイ新聞 2012年6月30日付け
ブラジルきっての大富豪エイケ・バチスタ氏が所有する企業グループEBXの株価総額が、2日間で130億レアル以上暴落した。29日付伯字紙が報じている。
今回のこの大暴落の原因は、石油企業OGXがリオ北部のバシア・デ・カンポスに所有するトゥバロン・アズル油田に対する市場からの信用度が落ちたことにある。同社は26日夜、同油田の1日の石油採掘量が5千バレルであることを公表したが、これは採掘開始当初の見込み2万バレルより大幅に少ない。
それに伴い、銀行はOGXに対する格付けの見直しを行い、HSBC銀行は、同社株の1株益予想と株価収益率を掛けて計算する目標価格を22レアルから16レアルに下げた。JPモルガン銀行は目標価格を18レアルから7・5レアルに下げた上、資産配分の比率も、通常より上の「オーバーウエイト」から一般並みの「ニュートラル」に引き下げた。
これにより、OGXの株価は27日に25・3%、28日も19・2%ダウンし、この2日間で132億7400万レアルの損失を計上。同社は今月に入り169億8700万レアル、今年の累積では277億500万レアルの損失を計上したことになる。
この事態を受け、28日、エイケ氏はOGXのパウロ・メンドンサ氏の更迭を行った。メンドンサ氏はペトロブラスで30年以上の経験をもつ大ベテランで、同氏を引き抜いたエイケ氏が「ドクター・オイル」と呼ぶほど信頼を置いていた。メンドンサ氏の後任にはエイケ氏の別会社OSXのルイス・エドゥアルド・ギマランエス・カルネイロ社長が迎えられるが、同氏もペトロブラスで30年のキャリアのある人物だ。なお、メンドンサ氏はOGXの経営審議会には残る予定。
また、OGXの株価暴落の影響はグループの会社にも及び、MMXミネラソンが17・08%、LLXロジスティカが8・07%、OSXが11・05%、MPXエネルジアが1・57%、CCXカルヴァンが8・80%の下落となった。
グループの損失はエイケ氏自身の資産にも影響し、443億レアルの資産の内、49億6千万レアルを28日に失った。ブルームバーグによる同氏の長者番付は21位から28位に下がった。経済誌フォーブスの発表では同氏は世界第7位の富豪とされている。また、29日付エスタード紙によると、今回の株価暴落で、エイケ氏はブラジル一の富豪の座をABインヴェブとバーガーキングの会長であるジョルジュ・パウロ・レマン氏に奪われる危険性があるという。