ニッケイ新聞 2012年7月13日付け
カショエイラ事件の渦中にあるデモステネス・トーレス上院議員(元民主党:DEM、現在無所属)が、11日上院本会議で議員資格を剥奪され、上院では史上2人目の罷免議員となった。12日付伯字紙が報じている。
虚偽の証言や収賄、犯罪者保護などを理由とするデモステネス議員の議員資格に関する審議は、特に波乱もなく3時間あまりかけて行われ、賛成56票、反対19票、棄権5票で、同議員の罷免が決定した。
これにより、デモステネス氏は、政治汚職などに対する刑罰を規定したフィッシャ・リンパ法に基づき、2027年まで公職選挙への立候補が認められなくなった。また、188年に渡るブラジル議会の歴史上、上院議員の罷免は、サンパウロ州で起きた建設業者との不正取引疑惑で偽証罪に問われたルイス・エステヴァン上院議員(民主運動党:PMDB)が2000年に罷免されて以来のことだ。
審議中に携帯電話で夫人との愛のメッセージを取り交わし、家族からの励ましも受けたデモステネス議員は、最後の弁明で「罷免を決めるのはマスコミじゃなく議院だ。頼むから無実を証明させてくれ。私の人生を終わらせないでくれ」と懇願したが、その願いがかなうことはなかった。
デモステネス氏は41歳だった2002年に自由戦線党(PFL。DEMの前身)から立候補して上院議員に初当選。それ以前はゴイアス州の検察局や公安局の業務を担当してきた同氏は、2005年にメンサロン事件の議会調査委員会(CPI)の委員となったほか、2009年には憲法法務委員会(CCJ)の委員長に選ばれ、フィッシャ・リンパ法の上程役も担当した。その一方、今年2月に連邦警察に逮捕された賭博士のカショエイラ氏とは2004年頃からかかわりを持ちはじめ、「友人」と呼ぶほど親密な仲。デルタ社に巨額の不正契約を斡旋した疑惑などで、3月からカショエイラ事件の渦中の人物となっていた。
本来、汚職を取り締まる立場にあったデモステネス氏の罷免投票に対し、デモステネス氏から2007年にロビー活動を理由に罷免を提案されたこともあるレナン・カリェイロス上院議員(PMDB)は、「同僚を裁くのは本当につらいことだ」と発言。他の上院議員らからも同様の声が聞かれた。
デモステネス氏の罷免によって空いた議席はヴィウデル・モライス氏(DEM)が埋めるが、同氏の前夫人は現在カショエイラ氏の妻で、モンテ・カルロ作戦の盗聴資料には、ヴィウデル氏をゴイアス州の上院議員第1補欠とし、州インフラ局長に据えたのはカショエイラ氏であることをうかがわせる会話が録音されている。また、ヴィウデル氏は24の企業の役員であるにもかかわらず、高等選挙裁判所には15しか届けを出しておらず、収入を偽るなど、早くも疑惑を持たれはじめている。