ニッケイ新聞 2012年7月14日付け
雲一つない晴天から、逃げるように山間へと沈む夕日。その美しさに見惚れるうちに、気付けば風はピタリと止んでいた。辺りが薄暮れに近づく程、7百余の仄かな灯火は存在感を増し、墓地とは思えぬ幻想的な雰囲気を作り出していく—。
A・マッシャードの招魂祭では、午後5時を過ぎると日本人墓地の墓石全てに蝋燭が供えられる。その時間帯になると風が止むことは、当日必ず晴天となる事と共に90年以上続く「不思議」として耳にしていた。
眉唾ものと話半分に考えていたコラム子だが、現場に立ち会ってその「不思議」による光景を目の当たりにし、見事に心奪われた。
隣接する慰霊祭会場から流れるBGMは長渕剛の「乾杯」。その美しい光景はまさに、人生の大先輩である先人たちからの「君に幸あれ」という応援だったのだと思えて仕方がない。(酒)