ニッケイ新聞 2012年7月17日付け
森林保護区制定による土地所有権問題に手を焼くジウマ政権がパラー州南部ジャマンシン保護区の縮小を検討中で、森林伐採が加速する懸念があると16日付エスタード紙が報じている。
ルーラ政権は法定アマゾンの森林伐採を抑制すべく、2006年にジャマンシン一帯の森林を国の保護区とした。その面積はブラジルの保護区でも最大規模のものだ。だが、同保護区内では大半の土地所有者との交渉が正式に終わっておらず、政府が支払わなければならない賠償金は数10億レアル単位に上るという。
ジウマ政権は130万ヘクタールの保護区の土地の3分の1以上を所有者に返還する方向で動いており、環境省が提案を検討している段階だ。イザベラ・テイシェイラ環境相は、「乱伐が再び起きないためにも、(返還前に)本来の土地所有者か、伐採を目的とした名目だけの土地所有者かを見極める必要がある」と語っている。
だが、その削減面積はサンパウロ市の約3倍にあたる広大なものであるため、環境活動家の間では森林保護の終焉を危惧する声が漏れはじめている。2005年には30平方キロ弱だった法定アマゾンの森林伐採は、2009年には約4分の1以下まで減っていたが、保護区の制定や森林伐採削減のペースは、ジウマ政権発足以後落ちている。
保護区では、生活に最低限必要な木の採取や農作物の栽培はできるが、森林伐採による牧場や畑の開拓は認められないにもかかわらず、ジャマンシンでは5月、月間伐採面積としては過去2番目となる1平方キロの森林伐採が行われた。同地区ではルーラ政権末期に大規模な違法伐採の取締りが行われ、不法飼育の牛が押収されている。
現在、ジャマンシン保護区の約半分にあたる600ヘクタール分の土地所有権を主張し、議会に対する強いロビー活動を行っているのは約500家族。これらの家族を代表する弁護士がイザベラ環境相にあてた書類によると、同地区の土地所有者は、1970年代の国道163号線開通で、法定アマゾンは国の開発の中心となり、政府から恩恵を受ける可能性があると信じて土地を所有した人々だ。同保護区は国道完成後に急増した森林伐採を防ぐ目的で制定されたもので、保護区内で生活している土地所有者は4%に過ぎない。
13日付フォーリャ紙によると、法定アマゾンでの森林伐採が進めば、50年後には同地区の哺乳類は10%、両生類や鳥類も4〜1%絶滅すると見られている。今回のジャマンシンの保護区縮小は、生物種絶滅を加速させかねない出来事だ。