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第51回パラナ民族芸能祭=今年も1500人が来場=工夫凝らした演出に満足

ニッケイ新聞 2012年7月19日付け

 「お客さんの目も肥えてきた。常に楽しませる舞台を作りたい」。7月3〜14日にパラナ州都クリチーバ市内のグアイーラ劇場で開催された「第51回パラナ民族芸能祭」で10日夜、クリチーバ日伯文化援護協会による公演が開かれ、約1500人の観客が駆けつけた。文協のおどり会を長年指導してきた花柳龍千多さんは冒頭のように意気込んで臨み、民舞愛好会をはじめYOSAKOIソーランや太鼓グループなどが今年も工夫を凝らした舞台を準備、来場した観客を魅了した。

 華麗な衣装で登場したおどり会の「藤娘」で開幕、しなやかな演技が来場者の目を引いた。同会の「おとこの潮路」では力強い男踊りも披露された。民舞愛好会の団体踊りは「桜道」「博多おどり」で振付や衣装から情緒たっぷりに演出。おどり会青年部は「心舞」、リズミカルな歌に合わせた「ちゃっきり節」を踊り、その可愛らしい所作に会場が沸いた。
 クリチーバ琉球国祭り太鼓、若葉YOSAKOIソーランも「笑顔のまんま」「時をこえ」「ドッコイショー」などで元気溢れる舞台を披露。演技の途中には、会場から声援が飛んだ。
 若葉太鼓は日本の大会で賞を獲得した「シリウス」のほか、カッポン・ボニートの源流太鼓を招待し「元寇—天の恵み」「喧嘩屋台囃子(けんかやたいばやし)」の2曲で共演を行った。両グループの威勢の良い掛け声が会場に響き渡った。
 民謡保存会も「外山節」で参加。第2部の最後は、出演者全員参加の「まつり」で華やかに締めくくられた。
 おどり会唯一の男性で非日系のラファエル・カマルゴ君(21)は同祭が初舞台、殿役で「千代に舞う」に参加した。若葉YOSAKOIソーランに参加しながら、同祭などで鑑賞しては舞踊に憧れていたという。「前からやりたかった。稽古に参加するため、日本語の勉強にも力を入れたい」と目を輝かせた。
 松葉杖をつきながら会場に足を運んだのは、植村愛子さん(87、高知)。「毎年違った演出なので楽しみ。足さえ良ければ、また綺麗な着物を着て踊りたい—」。20年舞踊を続け、龍千多さんから習うためにサンパウロ市まで通っていたという植村さんは、今は会場席から舞台を見つめていた。
 同祭には総勢150人が出演、スタッフ合わせて計200人の協力によって実現された。裏方では、音楽や照明係に出演者の家族など、多くの男性陣も総出で手伝いに回った。公演後、文協の石井ジョルジ会長が協力者に「今年も最高だった」と労いの言葉を掛けて回っていた。
 毎年の演出に力を注ぐ龍千多さんは「分かってくれる人にはいくらでも仕込みたい」と情熱を掲げる。「明日から、またすぐに来年の舞台に向けて振付を書き始める。生徒を思い浮かべて筆が乗ると夜も眠れない」。すでに来年の公演が待ち遠しくなっているようだ。(長村裕佳子クリチーバ通信員)