ニッケイ新聞 2012年7月21日付け
英国の雑誌『ランセット』が、運動不足は様々な病気の原因となり、全世界では1年間に530万人が死亡と報道。18〜20日付ブラジルメディアも、その内容やブラジルの実態などを報じている。
『ランセット』誌に「運動不足は全世界で年530万人の死者を出している」と発表した研究者達は、運動不足は世界中で流行っており、煙草や肥満と同様、寿命を縮める原因となっていると警鐘を鳴らしている。
〃流行る〃という言葉には、電気製品の普及や治安の悪化なども一因となって、体を動かす機会が急速に減った現代社会を懸念する研究者の思いがこめられており、世界の成人人口の30%、13〜15歳では80%が運動不足だという。
運動不足か否かは、散歩や庭仕事、サイクリングなどの軽い運動で1回30分を週5回、もっと体を動かす場合は1回20分を週3回、あるいは両者を折半した程度の運動を行っているかどうかで判断する。
運動不足は、肥満や糖尿病、ガンや心臓疾患といった非感染性の病気の10%を引き起こす原因となるが、運動不足の原因は人により様々だ。忙しくて時間が取れない、面倒くさいといったケースは個人の努力で解消できる事も多いが、肥満や遺伝性の病気などで体を動かすのが辛いという例もある。また、公園や自転車専用レーンの設置、公共交通網の改善、道路の照明整備など、環境面の改善も運動不足解消や成人病予防に役立つ。
33人の研究者の一人は南大河州ペロッタスにある連邦大学教授のペドロ・アラル氏で、ブラジルで運動不足とされた成人は全体の49%。性別では男性47%、女性51%で女性の方が運動不足ぎみ。ラ米・カリブ地区で運動不足が目立つのはアルゼンチン、ブラジル、ドミニカで、運動不足が少ないのはグアテマラだ。
ラ米・カリブ地区で見た場合、心臓疾患や糖尿病、ガンによる死者の内、運動不足が原因の死者は11・4%。ブラジルはこの割合が13・2%で、運動不足の人が多い事が数字にも出た。
具体的には、ラ米での心臓疾患の7・1%、2型糖尿病の8・7%、乳ガンの12・5%、大腸ガンの12・6%が運動不足によるとされ、慢性病で6万人、大腸ガンでも1万4千人の死が日頃の運動で防げたはずだという。ブラジルでの割合は、心臓疾患8・2%、2型糖尿病10・1%、乳ガン13・4%、大腸ガン14・6%と高い。
ブラジル成人の15・8%は肥満で52%は適正体重以上、25・4%は高血圧で5・6%は糖尿病、65歳以上では21・6%が糖尿病で59・7%が高血圧といった数字は、国民の49%が運動不足である事の裏返しだが、TVでは、職場で毎日10分体操をやるようになったのがきっかけで、歩いたり運動したりするのが日課となり、体重が15キロ減った人も紹介されていた。