ニッケイ新聞 2012年7月21日付け
この冬のアルゼンチンではブラジル人観光客が激減し、同国の観光業者が旅行者獲得に躍起になっていると20日付フォーリャ紙が報じている。
今年のブエノスアイレスはカフェも閑散とし、観光名所のレコレッタでもレアルで書いた割引料金の札を掲げたタクシーが通行人の後を追いかけているという。例年は60〜70%埋まるホテルの利用率は40%を切り、通年なら78%埋まるタンゴのナイトクラブも38%の入りに止まっている。アルゼンチンへの外国人観光客は2009年から10年に29%増えたのに、10年から11年は2%の伸びで終わり、今年は4月に昨年同月比5・9%、5月も同4・7%減少した。
こうした現象はアルゼンチンの高インフレの影響で、公式インフレ率は9%でも実際のインフレは25%とされている。インフレの影響は観光客の目にも明らかで、ブエノスアイレスの中央部のコーヒーは11ペソなのにレコレッタでは16ペソ、ワイン付の食事も60ペソが85ペソとなっている。さらに、同国の現地通貨の価値はどんどん下がってドル高となっている上、レアルの買い取りも制限されたため、ブラジル内でもドル高レアル安に直面しているブラジル人観光客の足が遠のいた。
こうした事態を受け、現在アルゼンチンでは、高インフレに伴う観光客減少への様々な対策を検討中だ。「ブルー」と呼ばれる闇ドルの半分のレートで買える「観光ドル」の流入はその一例で、同国内での商業部門に適用されている付加価値税の返済処置をホテルやレストランでの経費にも適用し、空港で返済請求できるようにすることも検討されている。
また、ブエノスアイレスの観光業界代表のヘルナン・ロンバルディさんによると、最も取り戻したいのはブラジルからの観光客だという。