ニッケイ新聞 2012年7月25日付け
2010年11月に麻薬密売者らを制圧、7月9日には治安管理の責任が軍警による平和駐留部隊(UPP)に完全移行したリオ市北部のアレモン地区で23日夜、UPPの署が襲撃され、婦警1人が死亡するという事件が起きたと24日付ブラジルメディアが報じた。
リオ市のファヴェーラでのUPP設置が始まったのは2008年11月。住民により近くを目指すUPP設置以来、初の担当警官死亡事件は、犯罪者らによる小銃乱射という形で起きた。
現場となったノヴァ・ブラジリアのUPPは、アレモン、ペーニャ両地区にあるファヴェーラの中でも最も早い今年4月18日に、ファゼンジーニャの丘のUPPと同時に開設された。
ノヴァ・ブラジリアのUPP襲撃は23日21時頃。30分前にはペドラ・ド・サッポと呼ばれる所で、5〜6人の男性を取り調べようとした巡回中の軍警らが銃撃戦を展開し、軍警1人が負傷。犯罪者は逃亡した。
同地区第2の襲撃現場となったノヴァ・ブラジリアのUPPでは、死亡したファビアナ・アパレシーダ・デ・ソウザさん(30)と5人の軍警が勤務中だったが、四方を囲まれ、どこから撃っているのか特定出来ないほどの小銃連射を受けた。
銃撃戦は30〜40分続き、凶弾を胸に受けたファビアナさんは、同僚らの手でアレモン地区の診療所に運ばれたが、助からなかった。
アレモン、ペーニャ両地区は、10年11月に軍の装甲車なども投入した制圧作戦が行われ、麻薬密売者が離散。州政府の要請で治安確保のために派遣された軍は、4月から管理責任を軍警に移行し始め、7月9日に完全撤退していた。
UPPの勤務は、治安管理のための巡回活動や地域住民と接して地域の必要に応える事を主眼にしており、隊員の使う防弾チョッキもBOPEなどの特殊部隊の使うものより薄手で、小銃での攻撃は防げなかった。
ファビアナさんはUPP勤務警官初の死者で、平定後のアレモン地区初の殺人事件の犠牲者でもある。G1サイトには同地区平定の証であるロープウエーを弾痕の穴から眺めた写真も掲載されたが、リオ市内にある25のUPPでは5500人の軍警が勤務して140コミュニティーの治安確保に貢献。バイア州も同様の組織を導入中だ。
リオ市内のファヴェーラ平定で麻薬密売者が周辺都市に拡散したのは同州の課題の一つだが、UPPコーディネーターのロジェリオ・セアブラ大佐は24日、BOPEなども導入してアレモン地区の警備を強化して犯人捜査に全力を挙げる事と共に、UPPの働きはこれまで通り継続するとの意向を表明。UPPはその働きの内容上、婦警の割合が通常の9%より多い11%となっており、セアブラ大佐も、ファビアナさんの働きが如何に大切なものであったかに触れてその死を悼んだ。