ニッケイ新聞 2012年7月26日付け
ジウマ政権発足以降、労働者党(PT)政権の看板政策である経済活性化計画(PAC)は思うように進展せず、基幹構造(インフラ)関連の投資は2年連続で縮小と24日付フォーリャ紙が報じた。中規模都市向けの新計画発表など、表面的には拡大中のPACが本来の目的を達成する事を阻む要因が続出している。
ルーラ政権では〃PACの母〃と呼ばれ、19日にも中規模都市向けに70億レアルを投じる計画を発表したジウマ大統領だが、看板政策のPAC事業は思うように進展せず、中核をなすはずの基幹構造同事業などへの投資が縮小している。
PAC事業は、文字通り、経済活動を活性化するための公共事業で、その範囲は、基幹構造関連や市街化関連、下水処理などの保健衛生関連などに大別される。
24日付フォーリャ紙によると、大口事業が集中する基幹構造関連の今年前半の計画実行率は、陸上輸送が26・7%、鉄道輸送が13・7%、海上輸送が59・4%。これら3部門への上半期の投資額は、2010年と2011年の63億レアル、67億レアルを大きく下回る44億レアルで終わっている。
PAC全体への投資額も、2010年の101億レアルが2011年には96億レアル、2012年には84億レアルに減っているが、基幹構造関連事業への投資が昨年同期比35%減という事態は、減速化が続くブラジル経済のマイナス要因だ。
統括報告には、昨年までの事業の支払いや、持ち家政策の〃ミーニャ・カーザ、ミーニャ・ヴィダ(我が家、我が生涯)〃関連で昨年までに契約済みの融資分も加算されるため、投資の落ち込みはカモフラージュされるだろうが、エネルギーや物流、市街化などを広範囲で推進するためのPACが、現政権で足踏みしている事は明らかだ。
PAC事業が思うように進んでいない一因は昨年表面化した交通省などでの大型汚職で、輸送インフラ局(Dnit)などの幹部が更迭された事は記憶に新しい。また、今年2月に表面化したカショエイラゲートで、PAC事業に携わる企業の汚職が摘発された事も事業停滞の一因だ。
23日付エスタード紙が報じた土地買収などに絡む裁判急増も一因だ。PAC事業2万件に関連する訴訟8609件中、5405件が土地買収などに絡むもの。昨年7月までは訴訟全体の42%だったが、現在は3分の2に増えている。土地や家屋の買収は工事の進捗には不可欠かつ時間と手間がかかるため、多くの事業が足踏みしている原因となっている。
一方、25日付伯字紙は、6月の国庫収入が昨年同月比6・55%減と報道。選挙対策と景気刺激のために金融政策の緩和を考える政府には頭の痛い減収も、PAC事業の遅れなどによる経済活動の停滞が招いた結果の一つだが、下半期の経済回復が遅れれば、事業推進は一段と困難になる。