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日伯教育機構再スタート=既存校の強化を図る=日本側の受け皿も決定=中央協会 田尻理事がてこ入れ

ニッケイ新聞 2012年7月27日付け

 およそ30年前から度々コロニアで議論・検討されてきた日伯学園構想。これを最終的理想像に掲げ、既存の日系学校を支援・強化する試みが始まっている。すでに2007年、各校の意見や要望を吸い上げ日本政府に交渉する機関として日伯教育機構が設立されたが、日本側に窓口がなく休眠状態だった。しかし04年から4年間、CIATE専務理事を務めた田尻慶一さんが日本ブラジル中央協会(本部・東京)の理事となったのを機に昨年7月、同協会内に日本側の受け皿として「日伯文化交流委員会」が設けられた。この度、田尻さんの来伯を機に、同委員会の発足が正式に公表され、本格的に事業を再稼動する意向が示された。

 日系社会は150万人といわれているが、宮尾進・同機構理事長代行は「日系人のアイデンティティを意識している人は10万人にも満たない」と言う。日伯学園構想が度々浮上する背後には、こうした日本文化衰弱・消失への危惧がある。
 欧州諸国をはじめ、イスラエル、韓国など他国の移民は、それぞれ官民共同で優秀校を育て上げ、自国の言語や文化の普及に努めている。
 例えば独系フンボルト校、伊系ダンテ・アリギエリ校、スペイン系セルバンテス校などは国内有数の名門校だ。
 日系社会内で最後に日伯学園構想が議論されたのは約10年前。サンパウロ市文協内に委員会を設置。具体的検討が進められたが構想は一本化されず、実現には至らなかった。
 日系社会で実現困難な理由として、宮尾理事長代行は「日本人は海外文化の受信能力は抜群だが、発信能力はゼロ」と指摘する。日本人の民族意識は低く、そのため他の民族に見られないスピードで同化も進行していると解説する。
 以上の反省から、より実現に近い取り組みとして「小さくて基盤も薄いが、本国の支援なしで頑張っている学校を育てていこう」と既存の学校を強化し、ブラジル有数の優秀校に育て上げるという目標が掲げられた。同機構の創立会員約30人が事業に携わる。
 現在の会員校は、スザノ日伯学園、アルモニア学園、赤間学院、大志万学院、越知日伯学園、エスコーラ・ニッケイの6校。いずれも一般ブラジル人を対象としており、日本語・日本文化を教育に組み込んでいる。
 今は、各校のニーズ把握や問題点の拾い上げに取り組んでいる段階で、教師同士の交流や情報交換により横の繋がりも出来つつある。
 田尻理事は「それぞれが独立した立場で優秀な学校になっていけば」と期待を込め、「機構に参加したい人、会員校になりたい学校があれば喜んで受け入れる」と話した。なお学校は、州教育局のカリキュラムに日本語を取り入れている所に限る(必須・選択は不問)。
 連絡先は宮尾理事長代行(人文研=11・3277・8616/月〜金午後2時〜6時)まで。