ニッケイ新聞 2012年8月1日付け
メンサロン事件の審理に、ルーラ前大統領の友人で労働者党(PT)顧問弁護士だったジョゼ・アントニオ・ディアス・トフォリ判事も加わる。7月31日付伯字紙が報じている。
判明から7年経ったメンサロン事件の裁判は、3日から最高裁判所(STF)で始まるが、この裁判にトフォリ判事が加わることを反対する声は同判事のSTF就任時からあった。それは同判事が、今回の裁判で矢面に立たされているPTと深い関わりがあるからだ。
トフォリ判事は、PTが下院で大躍進した1990年代に同党ならびに選挙関係のコンサルタント会社の顧問弁護士だ。また、検察庁が〃メンサロン事件の仕掛け人〃とするジョゼ・ジルセウ被告がルーラ政権で官房長官をつとめていた時の長官付き司法顧問で、ルーラ政権下の連邦総弁護庁のメンバーの一人だ。
STF判事就任前は数件の裁判でジルセウ氏の弁護士をつとめたこともあり、恋人のロベルタ・マリア・ランジェル弁護士は、メンサロン事件で起訴されている3人の被告の弁護士でもある。
これらの理由で、弁護士のパウロ・マガリャンエス・アラウージョ氏は7月30日、トフォリ判事をメンサロン事件の審理から外すよう求める嘆願書をSTFに提出したが、同氏は同件の審理関係者ではなく、嘆願書は却下される見込みだ。
トフォリ判事は、メンサロン事件では「事前の審理にも加わっており、途中で抜けるつもりはない」と発言。また、アイレス・ブリットSTF長官も「本人が審理に加わるつもりなのは事前審理に加わったことでも明らかだ」とし、過去の経歴と審理への関係を否定した。長官自身、1990年にPTからセルジッペ州の下院議員選に立候補(結果は落選)したころに、ジルセウ被告と友好関係を持っていた。
また、STFにはメンサロン事件の裁判を遅らせたくない事情がある。セーザル・ペルーゾ判事が9月3日、ブリット長官も11月18日に70歳の誕生日を迎え、定年となるからだ。STFはきょう1日にも会議を開き、裁判の遅延防止策を練ることにしている。
一方、民主社会党(PSDB)のフェルナンド・エンリケ・カルドーゾ元大統領は7月30日、FHC研究所サイトにメンサロン事件に関するビデオを公表し、「今回の裁判はブラジル史に残るものになる。私はSTFがブラジルは法治国家であることを証明してくれると信じている」と語った。また、STFが民意に目配せしすぎるとの声に、「判事が法に従って裁くべきであるのはたしかだが、法は人の人生と切り離されたものであってはならない」としてSTFを擁護した。同件に関するビデオは今週中にあと2本公開される予定だ。