ニッケイ新聞 2012年8月2日付け
上半期の基礎収支(公共部門の収入と支出の差)黒字額が、目標の47%に終わったと1日付伯字紙が報じた。昨年同期は目標額の61%だったのと比べると大幅な落ち込みだが、そんな折、国際通貨基金(IMF)が「ブラジルは自らの成長の犠牲になる可能性あり」と警告を発した。
基礎収支の黒字は国債などの負債に対する利子支払いに当てられ、今年の目標額は1398億レアルだが、今年上半期の黒字額は656億6千万レアルで、目標の47%に止まった。
基礎収支の黒字額縮小は収入が減った上に支出が増えた事が原因だが、減収の主な原因は経済活動の減速化だ。法人税の減少はもちろん、落ち込んだ経済活動活性化のための減免税処置も税収減をもたらす上、一般消費者が抱える負債が増えており、市場に出回るクレジット額を増やして消費促進という従来の政策にも限界が見えている。
昨年上半期の基礎収支黒字額は781億9千万レアルで目標の61%に達していたが、所得税の確定申告などで税収が増える上半期に目標の半分を割ったのは、2010年の36%以来だ。
月別の基礎収支では5月、6月の黒字額が激減しており、6月の黒字が28億レアルに終わった時点で、上半期の黒字も目標の半分を割る事となった。
実際には、6月の税収はインフレを0・5%上回る増収だったが、地方自治体の負債返済や徴税の遅れなどが85億レアルに上り、支出を差し引いた6月の基礎収支黒字は昨年同月比105億7千万レアルも減った。
他方、景気刺激のための公共投資も必要で、経済活性化計画(PAC)や貧困撲滅のための生活扶助などへの支出を削減するのは難しいが、持ち家政策分を指し引いた上半期のPAC投資は、昨年同期比2・7%とインフレ以下の伸びで終わっている。
一方、IMFが7月31日に、金融システムの安定性について、「ブラジルは自らの成長の犠牲になる可能性あり」と発表したのも気がかりだ。
IMFは、国際的な資本の流れの不安定さとコモディティ価格高騰という外部要因に注意を促しつつ、クレジット急増による経済拡大と貸付期間の延長を伴わない経済基本金利(Selic)の引き下げなどへの懸念を表明。不動産価格急騰によるバブル形成と消費者の負債拡大は明白で、08年の国際的な金融危機を乗り切る力となった国内消費拡大による経済活性化は、今後の経済の安定性を脅かす原因ともなるというのだ。
一般家庭なら、収入が減れば支出を抑えるのが当然だが、経済の活性化が必要な時期の社会福祉や公共事業への投資削減は難しい。政府の経済スタッフは下半期には経済活動も回復と言うが、その言葉を裏付けるような兆しがなかなか見えてこないのが現状だ。