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「ビジネスにつながる交流を」=農水省・日系農業者交流事業=第一回連絡会議を開催=南米各国、約20人参加

ニッケイ新聞 2012年8月4日付け

 中南米日系農協等の将来を担う若手の人材育成、中南米諸国と日本の間の良好な農業交流関係の維持・発展などを目的とした「中南米日系農業者連携交流事業」(日本の農水省実施)の第一回連絡会議が先月30日、サンパウロ市のニッケイパラセホテルで開かれ、来伯した農水省農村交流課の中尾純二課長補佐、同省国際交流課の嶋根一弘・海外技術協力官のほか、ブラジル、ボリビア、パラグアイなどの日系農協代表ら20数人が出席した。

 本事業は今年度(来年3月15日まで)、中央開発株式会社(東京都新宿区)が同省の委託を受け、農協等組織間の連携を強化するための会議開催、日系農業技術者の技術研修などを両国で実施するもの。今会議では最初のステップとして、各農協が抱える課題抽出、技術研修の内容と候補者の検討が行われた。
 冒頭、ブラジル農業拓殖協同組合中央会の近藤四郎会長は「今日、南米の農協は膨大な生産力を誇る。母国の食糧基地として位置付けられる日が来るのでは」と南米農業の潜在能力を評し、事業を直接担当する中尾氏は「移住支援は一区切りついたが(政府として)南米支援は今後も続ける意向」と説明し、「今後は交流事業に力を入れる」との方針を示した。
 その後設けられた質疑応答では、「成果を得るために(一年ではなく)プロジェクトは長期的なものであるべき。毎年委託業者が変わると持続性がないように感じる。毎年入札を行う制度を変えられないか」との意見が出た。それに対し中尾、嶋根両氏は、業者への委託では競争性や透明性がないと事業そのものが廃止の対象になりうると説明。「人同士の絆が重要である中、毎年業者が変わるのは心苦しい。最大限の努力をする」とし、理解を求めた。
 「日本は母国。何かを送りたいという思いが強い」と語ったイグアス移住地(パラグアイ)の福井一朗さんは、「ビジネスがないと交流は実らない。日本が求めているものをもっと知りたい」と訴えた。
 また、「交流や研究にとどまらず、経済的見返りがあるべき。我々の農産物が日本の商品化にふさわしいかどうか知識がない。ビジネスができる可能性のある会社を探してほしい」という意見も続き、単なる原料輸出を超えたビジネスへの希望がうかがえた。
 さらに、中南米から日本への派遣が中心の事業内容に対し、「日本の人に来てもらい、生産者の状況を把握してもらいたい」という要望や、「農業の維持には森林保護も関連する。植林のサポートを受けられないか」「日伯農協同士の交流を行えないか」という意見もあった。
 中央開発(株)海外事業部の松尾有紀担当部長によれば、以後は今月上旬に東京都内である事業推進会議の場で、今会議で出た課題や要望を共有し、日本での研修受け入れ先の検討が行われる。
 なお、本事業では今年度中に、「中南米リーダー人材育成研修」「中南米ふるさと交流研修」など、長期短期をあわせ両国で5〜6の研修が実施される予定だ。